浜松市で小学生を中心に1000人以上が発病した食中毒の感染源は、給食で食べた食パンだった。製造工場の女性従業員3人からノロウイルスが検出された。工場では衛生管理に気配りをしていたようだが、感染力の強いノロウイルス対策としては万全とはいえず、盲点に気付かなかったようだ。
感染源の給食パン―手作業で検査の女性従業員3人から検出
取材した大竹真アナによると、パンを製造したのは浜松市内の菓子製造業「宝福」(太田雅之社長)で、問題のパンが製造された日に勤務していた従業員23人について検便を行い、女性従業員3人からノロウイルスの陽性反応が出た。ノロウイルスは女性従業員用トイレの共用スリッパらも検出されたという。
工場のパン製造工程は「材料の管理」「生地の仕込み」「成形」「かま焼き」「スライス・検査・包装」の5段階に分かれており、3人が作業していたのは「スライス・検査・包装」の工程だった。「かま焼き」までの工程では過熱によってウイルスがあっても死滅するが、「スライス・検査・包装」は手作業で行なわれている。
食品衛生管理に詳しい日本食品衛生協会の高谷幸専務理事は「ノロウイルスはかなり飛散します。下痢をしていると、トイレに水を流す前にすでに飛び散ってしまい、床を汚染してスリッパに付着したと思う」と説明する。
この工場では、製造工程に携わる従業員がトイレに行くときは、外からの感染を防ぐために2か所のシャッターで区切られ、トイレに入る前に作業服の上着と靴を脱ぎスリッパに履き替える。トイレから出る時は自動的に両手を洗浄し、アルコール噴霧をしないとドアが開かないようになっている。
それなりに衛生面には気配りしているように見えるのだが、高谷専務理事は「アルコールはあまり効果はありません。製造工程に携わる人はトイレに行った時は別の服に着替えないといけない」と指摘する。
さらに、従業員の証言によると、「原則、従業員は作業で着ていたズボン、制服、エプロン、帽子は全部自宅に持ち帰り、自分で洗うことになっており、人によって毎日洗う人もいれば、丁寧に洗う人などまちまち」という。この点についても、高谷専務理事は「家庭で誰かが汚染されている可能性があり、持ち帰って洗うのはよくない」と話す。