ソフトバンクの「ホワイト家族」シリーズなど数々のヒットCMに携わってきたクリエイティブ・ディレクターの澤本嘉光とカンヌ国際広告祭で受賞歴のある映画監督・永井聡が、広告業界の裏側をコミカルに描いたコメディ映画だ。妻夫木聡、北川景子、豊川悦司、リリーフランキーなどの競演にも注目が集まっている。
国際的な広告祭で「ちくわのCMに受賞させろ」
広告代理店・現通で働く太田喜一郎(妻夫木聡)は仕事への情熱は人一倍だが、失敗ばかりしている。お人よしな性格が災いし、「無茶と書いてチャンスと読め」が口癖の上司・大滝一郎(豊川悦司)から無理難題ばかり押し付けられる。世界一のCMを決める祭典、サンタモニカ国際広告祭へ大滝の代わりに審査員として参加したのも、そんな無茶な仕事の一つであった。
ギャンブル狂いだが、仕事のできる同僚・光(北川景子)を同じ苗字ということで妻として同伴させ、リストラ部屋に追いやられている鏡さん(リリー・フランキー)に審査に使える英会話を伝授してもらって、張り切ってサンタモニカに出掛けた。
代理審査員が仕事と思っていたが、実際は大滝から自社のクライアントのちくわのCMを入賞させろと命じられる。入賞させなければクビだという。各国の審査員が自分のCMを入賞させようと根回しをしているなか、太田はちくわのCMがどうしてもいいとは思えず、アピールすることができずにいた。見かねた光に手助けされているうちに2人の距離も次第に縮まっていく。
実際のCM制作シーンも登場!エースコックの「きつねうどん」
広告業界に身を置くクリエーターたちが作っただけあって、描かれる業界の裏側にリアリティがある。たとえば、広告祭の審査員同士の根回しは映画で描かれているほど露骨ではないまでも、実際に行われているようだ。キャラの設定はステレオタイプで、あり得ない展開の連続なのだけど、垣間見えるそんなエピソードにドキっとさせられる。
実在する会社のCMを映画の中で制作するシーンもなかなかおもしろい。きつねうどんのCMは明らかにキツネが踊っているのに、クライアントの幹部が「ネコっぽさが足りない」というと、「これはネコです」とテロップを入れ、むりやりネコに見せるシーンがあったりする。このクライアントとクリエーターの無茶苦茶なやりとりに、エースコックという実際の社名が出てくるしゃれっ気に拍手を送りたい。そのCMはYOUTUBEなどで公開されているので、映画を観る前にぜひ見て欲しい。
妻夫木聡、北川景子を始めとする出演者のやり取りも笑える。リストラ部屋に追いやられている鏡さんと太田のやり取りは、撮影現場の楽しさがスクリーンの外まで洩れてくる。クリエーターたちが楽しんで作っているからなのだろう。
野崎芳史
おススメ度☆☆☆