欧米では裁判所が親権・養育判断。日本は行政機関の児童相談所
子どもたちを他の家庭に託すことが進まない原因は他にもある。親による児童虐待の増加で、これも児童相談所の扱いになる。全国の児童相談所が把握している虐待数は6万6000件にものぼっており、群馬県でもこの10年間に倍増していて、施設に入った子どもの対応には少ない職員しか割けないのが現状という。
80人の子どもを担当する児童相談所の職員は「できるだけ子どもたちに会って、家庭訪問して様子を見てはいるが、時間と手間もかかり、一人ひとり対応する時間は取れない」という。
里親や養子縁組制度に詳しい神奈川県立保健福祉大学の新保幸男教授はこう解説する。「欧米と日本の違いは、養子縁組など親権について判断する機関が、欧米では裁判所なのに対し、日本は児童相談所という行政機関なので、なかなか先に進みにくいんです。裁判所がもう少しこのテーマに積極的に関わる必要があると思います。
親権については、裁判所が決定する手続きを法律上明確にする必要があります子どもが一定期間を施設で生活した後は里親委託に移行するというような規定をそこに盛り込むことが必要でしょう」
虐待、貧困、望まない妊娠…ひと言で言えば、身勝手な親が増えていることに現行制度は追いついていない。育てられないのに親権を主張する中途半端な親の愛情は子供にとって幸せなのか。そうした親に代わって社会が子どもを育てるという意識改革が必要なのだろう。
モンブラン
*NHKクローズアップ現代(2014年1月15日放送「『親子』になりたいのに…~里親・養子縁組の壁~」)