年末年始は映画館で映画を観よう!勝手に選んだおススメこの3本

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<麦子さんと>故郷に帰って初めて知った死んだ母の本当の姿…悔恨と思慕の旅

   監督は「純喫茶磯辺」「ばしゃ馬さんとビッグマウス」の吉田恵輔だ。母親の愛を知らずに育った麦子(堀北真希)の元に、突然、母親・彩子(余貴美子)が現れる。兄の憲男(松田龍平)は逃げるように家を出てしまい、麦子と彩子の奇妙な生活が始まった。しかし、母親は末期の肝臓ガンを患っていて程なく死んでしまう。納骨のため、母親の生まれ故郷にやってきた麦子は、若いときの彩子にそっくりと町の人々に歓迎され、それまでは気づかなかった母の意外な一面を知る。

   この映画に出てくる母親像に共感できる人は多いと思う。おせっかいで、勝手に部屋を掃除して大切にしているマンガ本を捨ててしまったり、目覚まし時計の音が異様に大きかったり、「母親あるある」を詰め込んだような母親を余貴美子が見事に演じている。

   母親の生まれ故郷で初めて母親と向き合うという構成もすばらしく涙を誘う。正月の里帰り前におすすめの映画だ。

<かぐや姫の物語>高畑勲監督が8年かけて伝えたかった「生きるためのメッセージ」

(C)2013 畑事務所・GNDHDDTK
(C)2013 畑事務所・GNDHDDTK

   誰もが知っている「竹取物語」を原作に、高畑勲監督8年の歳月と50億円をかけて制作した。殴り書きのような画のタッチが喜怒哀楽を生き生きとさせ、日本の四季が見事に表現されている。

   「姫の犯した罪と罰」というキャッチコピーから、竹取物語の新たな解釈を提示されるのではと思ったが、話は物語に忠実な作りである。それでいて観客を飽きさせない。

   もちろん、画の力、故地井武男ら豪華な声優陣の演技力もあるが、物語の中にも「日本のいま」に向けた強いメッセージが込められているからだろう。「罪と罰」というどこかネガティブなイメージよりも、『風立ちぬ』の「生きねば」というフレーズの方が筆者にはしっくりくる。

<オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライブ>バンパイヤだって生活大変!バイトで稼いだ金で血を買って、人間とも共存しなきゃなんないし…

   オフビートな作風で人気を博すジム・ジャームッシュのおよそ4年ぶりの新作が、年末年始にかけて公開されている。いま流行りの「ヴァンパイヤもの」だが、何世紀もかけて愛し合っているバンパイヤのカップルのアダムとイブが、現代を必死で生きようとするさまが胸に迫る。

   どんな弦楽器でも弾くことができるアダム(トム・ヒドルストン)は、アメリカのデトロイトでアンダーグラウンドミュージシャンとして活動している。人間と共存するため、病院の医師に金を握らせ血液の供給源を確保している。そんな中、フランスで暮らしていた恋人のイヴ(ティルダ・スウィントン)やってくる。再会を喜ぶ二人の元に、さらにイヴの妹エヴァ(ミア・ワシコウスカ)が現れて、人間との共存を大事にしてきたアダムの生活が脅かされる。

   バンパイヤの生活が妙にリアルに描かれている。「もし本当にヴァンパイヤいたら、こんな悩みを抱えているんだろうなあ」と何とも切なくなってしまうのだ。

   病院から手に入れた「上物」の血液を飲んだときの恍惚とした表情と、その撮り方は一見の価値あり。見終わって、人間とヴァンパイヤが上手に共生できる世界を望んでいる自分に気づくことだろう。

野崎芳史

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