<オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライブ>バンパイヤだって生活大変!バイトで稼いだ金で血を買って、人間とも共存しなきゃなんないし…
オフビートな作風で人気を博すジム・ジャームッシュのおよそ4年ぶりの新作が、年末年始にかけて公開されている。いま流行りの「ヴァンパイヤもの」だが、何世紀もかけて愛し合っているバンパイヤのカップルのアダムとイブが、現代を必死で生きようとするさまが胸に迫る。
どんな弦楽器でも弾くことができるアダム(トム・ヒドルストン)は、アメリカのデトロイトでアンダーグラウンドミュージシャンとして活動している。人間と共存するため、病院の医師に金を握らせ血液の供給源を確保している。そんな中、フランスで暮らしていた恋人のイヴ(ティルダ・スウィントン)やってくる。再会を喜ぶ二人の元に、さらにイヴの妹エヴァ(ミア・ワシコウスカ)が現れて、人間との共存を大事にしてきたアダムの生活が脅かされる。
バンパイヤの生活が妙にリアルに描かれている。「もし本当にヴァンパイヤいたら、こんな悩みを抱えているんだろうなあ」と何とも切なくなってしまうのだ。
病院から手に入れた「上物」の血液を飲んだときの恍惚とした表情と、その撮り方は一見の価値あり。見終わって、人間とヴァンパイヤが上手に共生できる世界を望んでいる自分に気づくことだろう。
野崎芳史