安倍首相が政権発足1年の節目を選んで靖国神社を参拝した。特定秘密保護法、普天間飛行場の辺野古移設問題にメドがつき、反発が予想される韓国、中国とは仲たがいのままの現状は、むしろ参拝しやすい環境と考えたのだろう。ところが、アメリカから「失望している」と異例の声明が出た。これは予想外だったようで、安倍政権の足元を揺るがすことになるかもしれない。
オバマ大統領の不信「民主主義や人権で日本と価値観共有できるのか」
「アメリカは日本のリーダーが日本の近隣諸国との緊張を悪化させる行為をとったことに対し失望しています」
これまで首相の靖国参拝について公式には反対してこなかったアメリカ政府が、今回はアメリカ大使館を通じてこうした声明を出した。その狙いをどう解釈すればいいのか。アメリカ大使館一等書記官や中国大使館公使を歴任した宮家邦彦氏は、「アメリカにとって本当に大事なのは、日本と韓国の関係が安定することなんです。オバマ大統領に言わせる手もあったでしょうが、東京のアメリカ大使館からの発表という形にした。アメリカなりに不快ではあったけれども、かといって日米関係を壊したり、本質的に関係を変える動きに出ることは考えていないと思います」
外交ジャーナリストの手嶋龍一氏は「アメリカと(日本が)民主主義や人権といった問題で、価値観を分かち合わなくていいのかといった厳しい批判が予想されます。オバマ大統領としては、靖国参拝で重大な懸念を抱いたと思います」
「ワシントン・ポスト」安倍首相は中韓との首脳会談あきらめたのか
コメンテーターのロバートキャンベル・東大教授はこう見る。「辺野古移設にメドをつけた努力を評価し、アメリカはさほど強くは批判しないだろうとの読みがあったのだろうが、(アメリカ政府は)まったく逆さまで、『矛盾したことをやっている』とオープンにしたわけです。
気になるのはワシントン・ポストの報道で、安倍首相は中韓の首脳会談が実現しないなかで関係修復をあきらめ、むしろこの際に緊張を高めることで憲法改正、軍事化の空気を誘導しようとしているではないかと分析しています」
キャスターのテリー伊藤「靖国問題は、日本人全体でもう一度よく考えたほうがいい」
ここまで靖国参拝問題を引きずってきたのも、先の戦争を起こした真の責任はいったいどこにあるのかという問題を、戦後の日本人がきちっと総括してこなかったからだろう。