猪瀬直樹・東京都知事は辞職会見で「政策にはかなり精通していると思っていたが、いわゆる政務についてはアマチュアだった」と不用意に金に関わったことを悔いた。この「アマチュア」というのが意味深だ。「プロ」だったらうまく切り抜けたかもというのが言外にある。政治アナリストの伊藤惇夫氏も「当初からきちっと真相を話していれば、辞職にまで至ることはなかったかもしれない」という。一匹狼の猪瀬は、ライター、副知事として攻めには強かったが、守りに弱かった。アドバイスする「プロ」もいなかった。
猪瀬はまた、「傲慢だったかも知れない」といった。政策への自信がそうさせたのだろうが、議会を甘くみていたふしがある。今回の議会の追及には「江戸の敵を長崎で」という面もあった。
しかしもう遅い。都政改革もオリンピックも猪瀬の手を離れる。「これからは一人の作家として恩返しをしていきたい。オリンピックの成功を祈念いたします」という言葉には寂しさがいっぱいだった。
「女性がいい」で浮上する橋本聖子、小池百合子、片山さつき、蓮舫
政治の世界は非情だ。猪瀬辞職を受けて、永田町ではさっそく「次」への模索が始まったが、「都知事にふさわしいのはだれか」と考えると、なかなかいい顔が浮かばない。安倍首相は下村博文・文科相に出馬を打診したが、下村は「今の職務を投げ出す気はない」と断ったという。河村健夫選対委員長は「アマチュアでないプロ意識の高い知事を求めていかなくては」という。汚いこともやれるという意味か。
さらには「女性がいい」とか、勝手な思惑が走る。自民党からは橋本聖子、小池百合子、片山さつき、民主党からは蓮舫の名前が取りざたされ、議員辞職したばかりの東国原英夫、舛添要一などの名前が上がる。作家の大下英治氏は「都知事にはずっとインテリを選んでいる。今回、お金でつまずいたのだから、もう少し政治家らしい方がいいのでは」という。
「モーニングバード!」は名前の出ている7人について街で50人に聞いたが、東国原が16人、舛添氏11人。「該当なし」が11人いた。もっとも、東国原は「立候補の計画も予定もつもりもありません」、舛添も「全く考えていません」という。まあ、当然だろう。
アマチュア続きの都知事…リーダーシップと実務能力兼ね備えた人物いるか?
では、どんな人が望ましいか。伊藤は「東京は巨大で、韓国と同じくらいの予算規模がある。知事は経営能力を問われます。リーダーシップと実務能力」を条件に挙げる。飯田泰之(明治大准教授)は「知名度で争うのでなく、政党同士の、プロの政治家同士の選挙を見てみたい」
吉永みち子(作家)「手法に長けたプロじゃ困るけどね」
伊藤「行政経験者でも企業のトップでもいい。与党はまず勝つ候補を出してくるでしょう。434万人が失敗したと思ってるから」