「残念ながら説明責任を果たすべく努力してきたつもりですが、私に対する疑念を払拭することはできなかった」
疑念が晴れるどころか深まるばかりで窮地に立たされた東京都の猪瀬知事は、辞任表明でこう強弁した。では、残された疑惑解明はどうなるのか。都議会は疑惑究明のために決めた百条委員会設置について、「来年2月9日投開票」と見られる都知事選挙や来年度予算案審議などを優先して見送る方針だ。となれば、未解明の疑惑だけが残される結果となる。
「状況証拠」「職権」あり
注目されるのは東京地検特捜部の動きである。市民団体から出された告発状を受理し捜査を始める方針だが、医療法人「徳洲会」から受け取った5000万円の金が選挙資金なら公職選挙法違反(収支報告書の虚偽記載)になるし、便宜供与の見返りなら収賄罪に問われる可能性がある。
とくに、猪瀬知事は都知事選出馬表明の直前に徳洲会の徳田虎雄前理事長に面会し、このとき徳田前理事長から「東電病院を取得する意思がある」ことを告げられたことを認めており、5000万円が東電病院で便宜を図った見返りの可能性が出てきている。コメンテーターの菊池幸夫弁護士はこう話す。
「お金の動きははっきりしており、要はお金の趣旨。知事は『個人的な貸し借り』と言っているが、東京都は東電の大株主の1つで、当時その副知事で知事に立候補しようとしている人物にお金が動いたとなれば、当然、東京地検特捜部は注目する。
今までお金を受け取った側が注目されてきたが、お金を出した側がどうだったのか、双方の供述が必要で、特捜部がその辺に踏み込んでいくか。手腕が見どころになります」
お金は返したし、知事も辞任したのだからでは済まされない。万引きを見つかった窃盗犯が、お金を払うから見逃せという理屈と同じになってしまう。