医療法人「徳洲会」グループから5000万円を受け取った問題で、東京都議会総務委員会はきのう16日(2013年12月)、猪瀬知事の追及を再開した。貸金庫の管理や知事選の収支報告書の不審点など前後10時間もの長丁場となったが、大筋で証言が崩れるようなことにはならず、不毛なやり取りに終始した。
ボール紙の5000万円札束模型「カバンに入らない」本物なら入りそうだったけど…
何ともばかばかしかったのが、5000万円を運んだというカバンに現金が入りきれるかどうかという押し問答だった。公明党議員がカバンを持ってくるよう求め、知事は事務所にあったのを取り寄せ提出した。議員は「5000万円を模型にするとこんなにある」とボール紙で作った箱をカバンに入れようとした。しかし、入らない。「入りませんよ」という議員に、知事は「入ります」とカバンに押し込んでみせたが、チャックが閉まらない。
議員が持ち出したのはボール紙の四角い箱だ。実際の現金5000万円はもっと柔らかくグニャグニャしてたはず。「現金なら入るな」が実感だったが、だれもそんなことに思い及ばない。議場から汚いヤジがしきりと飛ぶ。何とも不毛な時間が過ぎていく。
5000万円を受け取った後、知事はこれまで「貸金庫に保管していっさい手をつけていない」と言っていたのだが、5月(2013年)に貸金庫を、八十二銀行青山支店から町田市の横浜銀行つくし野支店に移していたことが明らかになった。これも追及されたが、知事は「生活の場が港区から町田の方に移ったので、妻がすぐ返済できるように町田に移した」と語った。名義は妻で、管理していたのも妻だった。7月に亡くなった後、手続きに手間がかかったというのとも符号する。
もうひとつ、知事選の収支報告書の記載内容に事実と違うものがあったという点も追及された。これに知事は、「選挙の実務はすべて鈴木秘書にまかせてあるので答えられない。鈴木を読んでいただいて答えさせていただければと思います」と答弁した。
枝葉末節の追及で知事サイドは余裕
司会の羽鳥慎一「休憩を挟んで10時間。かなり苦しい答弁だったようです」
取材した高村智庸レポーターは「亡くなった奥さんがやったことだ、選挙は秘書がやったことだと釈然としなかったですね」という。猪瀬追及の都議会議員同様、端から知事はおかしいという前提のものいいだ。だったら、秘書を呼び出して聞けばいい。亡くなった奥さんについては確かめようもないが、少なくとも「金に手をつけなかった」のは確かだったように見える。となると、この先なにが問題となるか。カネの意味合いだろうが、これは知事も突っ張るだろう。
映像を見る限り、この日の猪瀬知事は終始落ち着いていた。細かい違いが出ても、全体の「金に手をつけていない」「貸金庫に保管」という言い分が変わったわけでもない。カバンに箱を入れたときも知事は平然としていた。高村も「(知事は)かったるそうだったが、終わったときはニコニコしていた」と認めている。なのに、報道は「苦しい答弁に終始しました」となる。ちっとも苦しんでなんかいなかった。議会の追及はきょう17日と24日にもあるが、もっとビシッと追及しないと結果は出ないぜ。