「このかばんに5000万円入りませんよ」
「入ります」
「どうやって入れたんですか」
「そのまま押し込んでください」
きのう16日(2013年12月)、猪瀬直樹東京都知事が医療法人徳洲会グループから5000万円を受け取った問題を追及する都議会総務委員会で、こんなやりとりがあった。5000万円を入れて持ち帰ったというかばんを手に、5000万円を束にした紙の模型をもって迫る議員の前で、猪瀬は自ら無理矢理押し込んで見せた。だが、かばんは膨らんでチャックは締まらない。暮れも押し詰まっての集中審議は、茶番じみた展開になってきた。
いつもの茶番「妻が…」「秘書が…」
この問題をめぐる猪瀬の発言や説明は毎日のように変わり、新しい事実も飛び出す。集中審議は先週に続いて、きのうも休憩を挟んで約10時間に及んだ。かばんだけではない。手帳も追及の対象になった。副知事時代のブログによると、猪瀬は「黒革の手帳」を愛用し、これに細かいスケジュールや1日の行動をびっしり書き込んでいた。「覚えていない」や「記憶にない」を繰り返す猪瀬に手帳で事実を確認してもらおうというわけで、資料として提出を要求された。
5000万円を保管したという貸金庫を解約、別の貸金庫に移し、しかも手つかずと言っていたのに2回開閉されていたことが判明すると、「出入れしたのは(亡くなった)妻なのでわからない」とかわし、運動員らの宿泊費や報酬について選挙運動費用収支報告書の偽造疑惑が指摘されると「秘書に聞いてください」を繰り返した。「妻が」「秘書が」は過去の政治とカネをめぐるスキャンダルで何度も聞いた言葉だ。
文
一ツ石| 似顔絵 池田マコト