アベノミクスを牽引しているといわれる自動車業界だが、たしかに今冬のボーナスは膨らんでいるらしい。あるメーカーの若手社員の支給額は昨年は約68万円だったが、今年は84万円だという。荘口彰久リポーターが「24%もアップしていますよ。増えて分は何に使うのですか」と聞くと、社員は「来年5月(2014年)に結婚します。その資金の一部として蓄えます」と話す。増えた理由としてあげたのは、「やはりアベノミクス効果による円安で、海外の売り上げが好調だったからだと思います」とはなす。
自動車販売好調だが、部品メーカーに強まるコスト削減要求
この円安効果はどの辺まで波及しているのだろうか。荘口は1次下請けのサスペンションメーカーを訪ねた。ここでも入社1年目の19歳社員がニヤリ。「前回と比べて少しだけ、数万円上がっています」と微笑んだ。ただ、経営者は「自動車販売は好調ですが、コスト削減を求める動きは強くなっています。海外への投資を強めることでなんとか利益の微増を確保できました」と話す。
荘口「2次下請けの金型メーカーのボーナスは横ばいでした。現場の責任者は『日本の金型技術は世界でトップ。その技術を生かして、どうにかボーナスは確保できた』と話していました。でも、3次、4次になると状況は厳しくなります」
プラスチック製品を製造しているメーカーはボーナスなし。電気料金値上げのため不必要な照明はすべて消し、製品を納入する段ボール箱なども使い回ししている。
社員50人以下の企業アンケート「ボーナスあり」半分だけ
メインキャスターの小倉智昭「自動車産業が牽引といっても、業界全体というわけではないのか」
4次下請けの経営者は「利益はほとんどでない。商談が次々と打ち切られています。電話がかかってくると、また悪い話しかと思い電話に出るのが怖い」という。
荘口「社員50人以下の下請け50社にアンケート調査をしたところ、ボーナスなしが半分の25社にも及びました」
コメンテーターの夏野剛(慶応大学大学院特別招聘教授)は「下請けの状況はさらに厳しくなるでしょう。コストの安い海外での部品製造・組み立てが進み、就業人口が減少する。生き残るのが大変な時代になりつつあります」と解説した。アベノミクスが始まってちょうど1年だが、依然として恩恵にあずかっているのは一部にすぎないということなのだろう。