テレビは正直だ。ゴマカシがきかない。きのう9日(2013年12月)の東京都議会総務委員会で、自民党議員の質問に答える猪瀬直樹都知事の背広の襟に汗が滴り落ちる。ぽとり、ぽとりと、1度や2度ではない。画面からその跡が浮かび上がる。本人の言葉とは裏腹に心の動揺がはっきりと映し出された。
強がり男の周章狼狽…汗びっしょりで挙手忘れて何度も注意
医療法人「徳州会」グループから5000万円を受け取った問題で、都議会は総務委員会を開き、5時間近くにわたって猪瀬を追及した。自民党は代表質問や一般質問であえて答弁を求めず、一問一答形式の委員会で真相に迫るという意気込みだっただけに、核心部分で「覚えていません」「わかりません」を繰り返す猪瀬に、質問者は業を煮やしたのか、「おかしいだろってんだよ、そんなの。人間としておかしいって言ってんだよ」と手荒な言葉を浴びせた。
傍聴席からも野次が飛ぶ。強面の強心臓といわれてきた猪瀬も、発言の際に挙手することさえ忘れ、委員長に何度も注意されるなど緊張は隠せなかった。
「選挙に落ちた後の金を事前に渡すやつはいなんですよ」と突っ込まれると、「(徳田氏は)僕は親切な人だと思いましたよ」といって口元をゆるめると、「ふざけるなとテレビの前で都民、国民はみんな言ってますよ。その親切な人を、私にも紹介してと全都民が言ってますよ」とやり返された。
オリンピック準備にも支障―もはや退任しかない?
きのう飛び出したのは、「私の責任の取り方として、今後1年間、知事の給料を全額返上したい」だった。キャスターの小倉智昭は「この給料返上という話、唐突でしたね」と苦笑する。
アナウンサーの笠井信輔「そうなんですね。この集中審議の冒頭でした。額は約2600万円ですが、普通、行政の長はよほどのことがないとやらないことだと思いますよ」
小倉「選挙に落ちたら生活に困るだろうからという話があって、給料全額返上したらまたお金を借りなきゃあいけなくなりますよ」
コメンテーターの古市憲寿(社会学者、評論家)「人って、あんなに大汗をかけるんですね。汗のかき方がマンガみたいで面白かったのですけど。でも、5000万円のことも大事ですが、このバッシングだけやっていていいのでしょうか。東京オリンピックなど大事なこともあるわけですから」
笠井「その準備を着々と進めていかなくならないのに、影響が心配されています」
小倉「追及している人たちは、本気で知事を引き下ろしたいと思っているのでしょうか」
宋美玄(産婦人科医)「5000万円借りていたことよりも、その後の対応が非常にまずいですよね。助言をしてくれる人もいないみたいだし、ここまで来ると、退任するしか道がないんじゃないと思います」
小倉「たしかに孤立している状況ですよね」
総務委員会の審議はきょう10日も5時間ほど予定されている。