「特定秘密保護法」よほど隠したいことでもあるのか安倍首相
あれほど反対の声があるのを無視して特定秘密保護法が成立となった。なぜこんな性急に、十分な審議も尽くさないまま、強行採決してまで、安倍首相は急いだのだろう。アメリカの要求というだけでは納得がいかない。よほど隠したい「特定秘密」が目前にあるのではないか。
こうなったら味噌もクソも隠してしまう国家秘密というやつを1つでも2つでも明るみに出し、こんなことまで秘密にしてやがると国民に知らせる戦いを、いますぐに始めなければいけない。
自民党の体質だが、圧倒的多数をとり野党を気にする必要もなくなったとき、内部からの暴言やスキャンダルで崩れていく。石破茂幹事長の「絶叫デモはテロと同じ」発言は、そうした緩みが出てきた何よりの証左である。
このトンデモ発言に噛みついた朝日新聞に『週刊新潮』が噛みついている。いつもの右派論客を動員して、「秘密保護法案に反対するデモや反原発デモは整然ではなく、騒然」(屋山太郎氏)、「執務に影響があるほどの音量なんですから、これはもうテロ、暴力行為です」(徳岡孝夫氏)、「左翼のデモは守れ、右翼の街宣はダメ。朝日は主張を同じくする団体の肩を持ち、対立する陣営を徹底的に潰しにかかる」(京都大学名誉教授の中西輝政氏)
市民たちのやむにやまれぬ行動をテロ呼ばわりする政治家を追及せず、メディアを叩くというのは、私にはとうてい理解ができない。週刊新潮は特定秘密保護法に賛成のようだから、次号で「祝・特定秘密保護法成立増大号」でも出したらいかがであろう。
恒例「2013ミステリーベスト10」国内1位は長岡弘樹『教場』
気分を変えるために『週刊文春』恒例の「2013ミステリーベスト10」へいこう。ミステリー好きにとっては見過ごせないものだが、ベスト3と寸評を紹介してみよう。
国内部門の第1位は『教場』(長岡弘樹・小学館)―汐見薫「ある章の登場人物が次の章では全く違った人間像を見せる。その無駄のない文体と鮮やかな展開に感服」
第2位は『祈りの幕が下りる時』(東野圭吾・講談社)―田村良宏「こんなにも悲しい動機を描いたミステリーに出会ったのは初めて。いつまでも忘れられない作品になるだろう」
ちなみに、東野氏は10位にも『夢幻花』(PHP研究所)が入っている。この作家の衰えない創作力には脱帽である。
第3位は『ノックス・マシン』(法月綸太郎・角川書店)―千街晶之「マニア気質と遊び心の融合から生まれた至高のパロディー短編集」
海外部門の第1位は『11/22/63』(スティーヴン・キング・文藝春秋)―狩野洋一「ファン待望の長編。ケネディ暗殺に時間を戻し、その後の歴史を織り込んだ読み応えのある力作」
第2位は『緑衣の女』(アーナルデュル・インドリダソン・東京創元社)―岩井志麻子「つらい物語だった。死体の身元を解き明かしながら、家庭内暴力も暴かれていく。心の中ってのが最大のミステリーか」
第3位は『遮断地区』(ミネット・ウォルターズ・創元推理文庫)―芹澤恵「人の弱い所、嫌な所を描くと右に出る者のない作家だが、今作では弱い人間にも骨がある所を丁寧に描く。それでいてこのスピード感」
私がベスト10で読んだのは高村薫の『冷血』、ジェフリー・ディーヴァーの『ポーカー・レッスン』、ローラン・ビネの『HHhH プラハ、1942年 55』だが、キングの本はさっそく読んでみよう。
滑稽!大手新聞社「広告倫理綱領」言い換え…「セックス」NGだが「SEX」はOKなぜか?
『週刊ポスト』の業界内幕ものが好きだ。今週は毎回やっている「死ぬまでSEX」シリーズの新聞広告のタイトルを巡って、朝日新聞、読売新聞との間で交わされた「戦い」の内幕を書いている。
11月25日号の「したことがないSEXをしたい」というタイトルで朝日新聞と揉め、新聞広告ではSEXという文字を小さくされた。先日も朝日新聞を見ていて「動く女●器」というタイトルがみつかり、ハハー、新聞側と揉めたなと思ったが、案の定だったらしい。
新聞社には「広告倫理綱領」というわけのわからないものがあり、それも各社まちまちに判断するから、面倒くさいことこの上ない。週刊ポストによれば、この1年間で新聞社側から言い換えを求められた言葉は、このようのようなものだったという。「潮吹き→快楽の極致へ!」「濡れちゃう→反応しちゃう」「やっぱり入れたい→やっぱりひとつになりたい」「抱いて死にたい→愛し合いたい」
おかしいのは煽り文句「オンナの『イクゥ』演技を見破る法」の「イクゥのゥ」にNGランプが点灯したというのである。結局、「いく」で決着したらしいが、これでは編集部の意図が伝わるまい。「イク」「イクゥ」「いく」の違いさえ分からない新聞社には、私もずいぶん腹を立てたものであった。
ひとつ披露すると、「○○のセックス」というのがひっかかったことがある。なぜだと問うと、新聞は子供も読むからセックスという言葉はやめてほしいというのだ。ではどう変えたらいいのかと聞くと、「SEX」ならいいという。なぜなら子供には英語が読めないからだというのである。こんなバカなやり取りがごまんとある。強精剤の広告さえ堂々と載せるようになった新聞が、週刊誌のセックス記事で新聞の気品が損なわれるなどとよくいえるものだと、私は再び腹が立ってきた。
田中将大いくらになる?米メジャー移籍で桁外れの年俸―サンデル教授「疑問の声出る」
さて、今シーズン24勝0敗という大記録を打ち立てて楽天日本一の立役者となった田中将大(35)のメジャー移籍が、紆余曲折あったが何とか決まりそうである。当初、移籍金と契約金合わせて160億円にもなるといわれていたが、新しい制度ではそこまではいかないようで、楽天側は渋っているという報道もあるが、最後は受け入れるのではないか。
だが、それでも田中には桁外れの年俸が払われるはずで、『週刊現代』が「田中将大よ、若いうちからカネをもらいすぎると道を誤るよ」と苦言を呈している。まず、ハーバード大学教授のマイケル・サンデル氏がこういう。
<「以前、東京大学で白熱教室を行っときたときのことです。私は学生たちに、イチローの年収がオバマ大統領の42.3倍であることをフェアだと思うか、という質問をしました。すると、『野球というビジネスが成り立っているならば、正当な対価である』という意見がある一方で、『年収の差は不当だ』という声も非常に多かった。彼らは『プロ野球選手よりも大統領のほうがはるかに影響力と重要性のある仕事だ』と主張していました。
たしかに、メジャーリーガーの年俸は、他の職業に比べはるかに高い。これは歴然としている。ノーベル賞の賞金は140万ドルですが、彼らの15分の1にも満たないですからね。業績や世界に与える影響を考えれば、イチローの年俸より賞金が高くても何らおかしくありません。
資本主義の原理に反するので、年俸の上限を決めることに賛同はしません。しかしプロ野球選手の仕事は、それほど価値があるのか。他の仕事に従事している人々から、疑問の声が出るのも当然でしょう」>
作家の伊集院静氏もこう話す。
<「(中略)アメリカのスポーツ関係者は、カネの価値を何だと思ってるのか。アメリカ経済のなかで勝ち組が持っている金銭感覚を、そのままスポーツの契約金に当てはめているような気がしてなりません。スポーツとはいえ、プロである限り労働であることに違いはない。にもかかわらず、100億というカネが、労働に対する対価として高すぎると考えないのは異様です」>
若いときの苦労は買ってでもしろということか。元サッカー日本代表の釜本邦茂氏もこういう。<「私も現役時代、長嶋さんや王さんの契約更改の記事を読んで、『羨ましいな』という思いを抱きました。こっちはサラリーマンと同じ給料しかもらえていないわけですからね。ただ一方で、若手のうちにそうした思いを経験したことで、社会の常識を失わなかったとも言えます。今のJリーガーたちも、年俸が低い分、学ぶことも多いでしょう」>
スポーツ選手の現役寿命は短い。現役を終え、残された長い「余生」を暮らすには、金銭感覚は絶対に必要であろう。カネがなくなれば人も離れていくし、ファンの熱い眼差しもなくなってくる。人生それからが本当の勝負である。田中にはいい年上女房が付いているから大丈夫かも知れないが、ちょっぴり心配ではある。
実の母と娘「凄まじい確執」過食と嘔吐繰り返し不安障害になった小島慶子
私のところもそうだが、母親と娘は仲のいいときは、男が入っていけないぐらいベタベタと睦まじい。だが、いったん口論が始まると、これほど始末の悪いものはない。嫁姑の仲違い問題はよく聞くが、実は実の娘と母親のほうが深刻なのである。嫁姑はしょせん他人だから、どこかで遠慮があるからだが、母と娘がケンカすると歯止めがきかなくなる。
『週刊朝日』は50代以上の母親と20~40代の娘の計1000人にアンケートをして、見えてきたものは「娘の1割が母親に支配されている」と感じているということだ。支配されていると思わないが75%もいるのだから、まあ、多くの母と娘はそれほど気にしてはいないようだが、相当深刻なケースもある。作家の村山由香氏が深刻な母との関係を語っている。
<「(中略)でも、母娘だからわかり合えるというのは幻想です。むしろ母娘だからわかり合えず、他人以上に根が深くなる。どうしても母の支配に苦しんでしまうなら、私は母を切り離していいと思います。罪悪感はもう、しょうがない。
母世代には、『愛することは支配すること』だと少しでもわかってもらえたらいいですね。望むと望まざるとにかかわらず、愛するほどに支配しているんです。(中略)
でも、その支配にしんどさを感じる娘たちは確実にいます。そのことを母親自身に気づいてほしい。理解できる人は少ないかもしれませんが」>
タレントでエッセイストの小島慶子氏も、母親との関係では苦しんだという。<「15歳のときに姉が結婚すると、母の関心が私に集中するのが怖くて拒食症になり、その後、過食と嘔吐を繰り返すように。母は知っていましたが、『吐きたくなるほど悩んでるのか?』と聞いてきたことはありません。
見たいものしか見ない人でした。娘は自分の延長線上にいる味方で、喜びも悲しみも一緒と信じて疑わない。悪気はなくて、ただ無邪気で無神経なんです。(中略)
次男出産後、職場復帰への不安も重なって不安障害に。カウンセリングで親子関係を見直した結果、私は母を、そして家族を『諦める』ことにしました。母を変えられないが、自分は変えられる。そうすれば見え方も変わる。その後7年間、母に会いませんでした」>
息子と父親の関係も難しいが、母と娘の関係はさらに複雑である。だいぶ前に女優の岸惠子さんと話しているとき、岸さんは自分の娘に嫉妬をすることなんかないんでしょうねと聞いてみた。すると岸さん、「ありますよ。年頃の娘の綺麗さに嫉妬しない母親はいないんじゃない」と答えた。こういうことも含めて母と娘の関係は男のあずかり知らぬところである。
【蛇足】週刊ポストで連載している「ビートたけしの21世紀毒談」が小学館新書から『ヒンシュクの達人』として出版された。帯に「悪口・暴言も、言い方ひとつで武器になる」とある。たしかに言葉は使いようで、武器にもなれば墓穴を掘ることにもなる。猪瀬直樹都知事、石破茂幹事長、この本を読んで「口撃」の仕方を学んだほうがいい。