恒例「2013ミステリーベスト10」国内1位は長岡弘樹『教場』
気分を変えるために『週刊文春』恒例の「2013ミステリーベスト10」へいこう。ミステリー好きにとっては見過ごせないものだが、ベスト3と寸評を紹介してみよう。
国内部門の第1位は『教場』(長岡弘樹・小学館)―汐見薫「ある章の登場人物が次の章では全く違った人間像を見せる。その無駄のない文体と鮮やかな展開に感服」
第2位は『祈りの幕が下りる時』(東野圭吾・講談社)―田村良宏「こんなにも悲しい動機を描いたミステリーに出会ったのは初めて。いつまでも忘れられない作品になるだろう」
ちなみに、東野氏は10位にも『夢幻花』(PHP研究所)が入っている。この作家の衰えない創作力には脱帽である。
第3位は『ノックス・マシン』(法月綸太郎・角川書店)―千街晶之「マニア気質と遊び心の融合から生まれた至高のパロディー短編集」
海外部門の第1位は『11/22/63』(スティーヴン・キング・文藝春秋)―狩野洋一「ファン待望の長編。ケネディ暗殺に時間を戻し、その後の歴史を織り込んだ読み応えのある力作」
第2位は『緑衣の女』(アーナルデュル・インドリダソン・東京創元社)―岩井志麻子「つらい物語だった。死体の身元を解き明かしながら、家庭内暴力も暴かれていく。心の中ってのが最大のミステリーか」
第3位は『遮断地区』(ミネット・ウォルターズ・創元推理文庫)―芹澤恵「人の弱い所、嫌な所を描くと右に出る者のない作家だが、今作では弱い人間にも骨がある所を丁寧に描く。それでいてこのスピード感」
私がベスト10で読んだのは高村薫の『冷血』、ジェフリー・ディーヴァーの『ポーカー・レッスン』、ローラン・ビネの『HHhH プラハ、1942年 55』だが、キングの本はさっそく読んでみよう。