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為末大が蹴つまずいたハードル!広告塔つとめる投資グループ「APF」41億円の課徴金

   週刊文春に2001年と05年の世界陸上400メートルハードルで銅メダルを取り、侍ハードラーとして名高い為末大が広告塔になっているアジア・パートナーシップ・ファンド(APF)という投資ファンドが、えらいことになっているという記事が載っている。

   そもそもは11月1日(2013年)、証券取引等監視委員会(SESC)がAPFグループの実質的代表である此下益司氏(46)に対して、40億9605万円の課徴金納付命令を出すよう金融庁に勧告したのである。社会部記者がこう話す。

<「これまでの課徴金勧告の最高額は法人で約十六億円、個人では約一億二千万円でした。個人に約四十一億円というのは前代未聞です」>

   APFグループは投資家から資金を集めて、タイなど東南アジアで不動産や企業などに投資し運用してきたそうだ。日本やタイで不動産、証券、食品などの企業を傘下に収め、2007年末には運用規模1200億円を超えていたとされる。

<「SESCの発表では、APFグループの会社ウェッジホールディングスが、虚偽の情報を公表し、株価を上昇させたとして金融商品取引法違(偽計)の疑いがあるというものでした」(社会部記者)>

   APFがメディアで取り上げられるようになったのは、2004年3月に為末が所属選手となったことがきっかけだったようだ。為末は著書『インベストメント ハードラー』(講談社)で、此下氏との出会いについて明かしているという。

   <「此下氏は超小型のファンドを作ってくれ、そのアドバイスに従って運用した結果、二年で三十万円が二千万円に増えた。為末は『とても手堅くビジネスを推し進めていました』、『怪しいなんて、とんでもない。この人は、本物だ』、『此下会長から多くのことを学びました』」>(週刊文春)と絶賛しているそうである。たしかに、為末の著書の帯には「30万円が2000万円に増えた話」と特筆大書してある。

   APFの顧客には元サッカー日本代表の中田英寿や水泳の北島康介、野球の古田敦也。芸能界では美川憲一やうつみ宮土理などのセレブがいるという。だが、ため息まじりにこう語る70代女性がいる。

<「APFの担当者は私のことを『おかあさん、おかあさん』と呼んで、いろんなところに連れ出してくれた。お寿司を食べに行ったり、うつみ宮土理さんの舞台に招待してくれたり。でも、三年前に配当が止まってからは、きちんとした説明もない。一番、後悔しているのは自分の稼ぎだけでなく、夫の分もつぎ込んでしまったことです。夫が亡くなった時に、もっと好きなことをやらせてあげられたのではないか、と。それもこれも上手い話にのせられた自分が悪いんです」>

   此下氏は約41億円もの課徴金を課せられる可能性があるほか、今年5月には投資家16人から、4億6200万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴されている。原告弁護団の橋口玲弁護士はこう語る。<「我々は、詐欺的な勧誘をした疑いがあると主張しています。口頭で元本保証をうたって商品を勧誘した疑いがあり、これは出資法違反の疑いがあるのです」>

   隆盛だったAPFの転機となったのは、2010年6月にAPFグループの会社に架空増資の疑いがあるとして、SESCが強制調査に入ったことだった。投資家B氏によると、強制調査の前からAPFには異変が起きていたという。<「タイで暴動が起きて事務所がクローズしたので」とか「タイにいる役員が辞めたから」>といって、とにかく配当を先延ばしにしようとしたそうである。そのうち強制調査が入って完全に配当が止まり、内容証明を送ったら、その日から一切連絡が取れなくなったという。

   週刊文春は、此下氏に対する「疑惑」には捜査当局も関心をもっていて、情報収集を続けているとある。約41億円の課徴金を課せられる裏に悪徳商法でもあったら、為末の責任も問われることになるであろう。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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