先発薬とまったく同じとは限らない「成分」―なぜか使用率低い「共済組合」
『週刊新潮』に廉価で新薬と同じ効き目のあるジェネリックについての特集がある。近畿大学薬学部教授・松山賢治氏はジェネリックのすべてが「先発薬」と同じ効力を持つと考えるのは危険で、注意しなくてはいけない点も多々あるというのだ。
日本のジェネリック数量シェアはおよそ45%で、欧米各国は軒並み70%前後をキープしているからまだまだだという。厚生労働省はそこで2018年3月までに数量シェアを60%以上に引き上げる方針を打ち出した。
だが、薬には薬効のある「主薬」のほかに、主薬の分解を防ぐために用いられる「安定化剤」や、錠剤の嵩を増やして消化液に溶けやすくする「賦形剤」から成り立っているが、ジェネリックに使えるのは特許が失効した主薬だけの場合が多いという。たとえば、「ランソプラゾール」という胃潰瘍の薬は、高温多湿の条件下では分解しやすいため、先発薬では安定化剤には炭酸マグネシウムが用いられているが、ジェネリックではこれが使えない。そうなると、長期保存が難しく薬効が弱くなる恐れがあるという。
その他にも、危険薬も出回っているという。ジェネリックには極端な条件下における安定性を確保するための「苛酷試験」が義務づけられていないからだという。高血圧や狭心症に用いられる「ニフェジピン」というのは徐々に溶ける二層錠の形をとるから、副作用を大幅に軽減できるが、特許の関係で二層錠の形をとれないジェネリックでは、ニフェジピンが一気に放出されてしまい、心筋梗塞を引き起こして死に至ることもあるという。
近畿大薬学部の研究チームがまとめたジェネリックの使用状況が興味深い。ジェネリックを処方された割合が最も多かったのは、共済組合を除いた被用者保険に加入している人で、次いで国民健康保険の加入者、次に高齢者医療制度の適用者で、最も低かったのが公務員たちが加入している共済組合だったというのである。
松山教授は「ジェネリックはやはり不安なので、自分や家族に使うとなると、役人もためらってしまう。さらには、そうした実態を彼ら自身も分かっているのでは…」と勘ぐられても仕方ないのではと批判する。ジェネリックをもらうときは、こうしたことを頭に入れておくべきだろう。