現役キャリア官僚が原発の裏側を告発したという小説『原発ホワイトアウト』(講談社)は発売2か月で13万部を超えるベストセラーになっているが、「そもそも総研 たまぺディア」コーナーで、著者の若杉冽氏にテレビ朝日ディレクターの玉川徹がインタビューした。
福島事故の原因もわかっていないのに…原子力ムラの謀略知らせたい
小説は政・官・財が三位一体となって原発再稼働を強行し、やがて再び原発事故が起きてしまうという内容だが、内容もさることながら、注目されたのは著者だ。肩書は東大法学部卒、国家公務員Ⅰ種試験合格で、現在は霞が関の省庁に勤務している。若杉冽はもちろんペンネームで、本名は明かしていない。
インタビューを申し込んだところ、顔、声を隠すということでOKとなった。「これまでインタビューは原則として顔出しの人しかやっていませんが、今回は身分を明かせない理由を納得しましたので、官僚としてのIDも確認したうえでお話を伺ってきました」と玉川はいう。首から上は見えないが、濃い紺系統の上着にグレー系のズボン、両手に白手袋をしていた。
玉川「この本をなぜ書こうと思われたのですか」
若杉「福島原発の事故のあと、原因も分かっていなのに再稼働しようという人たちがいます。どういう理由で、どういう手続きで再稼働するかということを、きちんと国民の皆さんに伝えていかなくちゃいけないと思ったわけです」
玉川「一番伝えたかったのは何ですか」
若杉「電力のモンスターシステムですね。われわれが払っている電気料金のなかに非常に大きな無駄があって、本来、競争的にやれば払う必要のないものが含まれています」
小説によれば、電力会社が取引先業者に相場より高めに工事や備品などを発注し、その一部をたまり金のように集めて、政治献金やパーティー券を購入したり、マスメディア対策に使ったりするシステムのことで、前提となっているのが電気料金の総括原価方式だという。
玉川「普通の民間企業はコストがかかることをいやがりますよね」
若杉「電気料金では、お金がかかればかかるほど消費者に転嫁できる仕組みが総括原価方式なわけですから、お金がかかればかかるだけ、たまり金は増えるってことですよね」
玉川「このまま再稼働に向かっていったら、どうなると思いますか」
若杉「やはり安全性の検証とか、そういうものが不徹底ですよね。日本の原発の安全性は世界最高水準ではありません」