中国国防省はおととい23日(2013年11月)、尖閣諸島を含む東シナ海の広い範囲に防空識別圏を設定したと発表した。「国家主権と領土・領空の安全を防衛するため」と主張していて、「圏内の飛行は届け出を義務づける」という。これは日本側の防空識別圏と大きく重なっており、国際的にも例がない。互いにスクランブルを繰り返す事態になるのだろうか。
アメリカ国務省・国防省「不測の事態懸念。日米安保の対象」強く非難
岸田文雄外相はきのう24日、「こうした一方的措置は認めない。中国側に厳重に抗議した」と語ったが、尖閣を「領土問題」と国際的にアピールしようという確信犯で、しかも軍事力での優位を背景にしているだけに、日本としても打つ手は限られる。
防空識別圏とは、領空に近づいてくる航空機の敵味方を識別するために、領空の外側に設けた空域のこと。領空・領海と違って、設定の範囲は当該国の裁量による。通過するにはコース、時刻、国籍などを通告する。通告せずに侵入するとスクランブル迎撃の対象になる。現在の日本の防空識別圏は1945年にGHQが設定したものを在日米軍が引き継ぎ、69年に防衛省が引き継いだ。
昨年12月、尖閣の領空を侵犯してきた中国航空機に、海上保安庁の巡視船が「領空侵犯だ」と警告したが、「ここは中国の領空だ」と答えている。領空侵犯と防空識別圏への侵入には自衛隊機がスクランブルをかけているが、中国機へのスクランブルは昨年は306回と前年からほぼ2倍増になっている。上半期の69回に対して下半期は237回と3倍以上になっている。おとといの発表直後に2機の情報収集機が尖閣諸島の北40キロまで接近して、自衛隊機がスクランブル発進して警戒したが、領空侵犯はなかった。中国側は「防空識別圏で初の巡視飛行を実施したと発表した。
こうした事態に、森本敏・前防衛相は「中国の立場を周辺国に示す狙いだと思うが、(防空識別圏が重なると)戦闘機がお互い接近する恐れがあるのでリスクが非常に高くなる。中国が日本の飛行機にどう対応するかを見ないといけない」と懸念する。
アメリカもケリー国務長官が「現状を変えようとする一方的な行動だ」と中国に強く自制をうながした。また、ヘーゲル国防長官も「不測の事態のリスクを高める」と非難し、さらに尖閣が日米安保条約第5条の適用対象(米が防衛義務を負う)だと確認した。外交・軍事チャンネルを通じて中国に懸念を伝えたという。
国際的PRしたい「尖閣諸島は領土紛争」
柿崎明二(共同通信編集委員)「中国は尖閣を領土にするのは難しいので、まず領土問題にしたい。ある程度予想されていたが、ちょっと早かったですね」
池田健三郎(経済評論家)「日本は追い払いつつ問題を大きくしないという、難しい対応を迫られますね。中国の目的はもめてることをPRすることなんです」
中国問題に詳しいジャーナリスト富坂聡氏は「日本の戦闘機が撃墜されるような場合にどう対処するか、真剣に考えざるを得ないですよね。大きなストレスですから、日中関係は悪くなります」
昨年の尖閣諸島国有化以降、中国船による侵入も目に余る。領海侵犯が70日242隻、接続水域侵入は292日1167隻(11月21日現在)にものぼる。
柿崎「先頃は無人機も飛んできた。これも対応できない。撃ち落とせば宣戦布告になるし、緊張は高まりますねえ」
池田「海でもレーダー照射問題があった。撃つぞという意思表示。これが空でも起こりうる。それをどう回避するかは大きな課題になります。自衛隊はよくコントロールされているが、中国側は何が起こるかわからない」
防空識別圏は民間機の航行にも影響が出かねない。中国は南シナ海でも同様の動きに出るものと見られる。難儀な国だ。