「目指すべきは強くとも謙虚な国。競争はしても戦争はしない」(中国政府外交ブレーン)
「海洋強国」は何を目指すのか。王氏は「中国はこれまで海を開発する余裕はありませんでした。新政権は2020年までに所得を倍増する計画で、そのためには海上輸送路、エネルギー、漁業資源の確保が必要となります。その過程でカベにぶつかった。しかし、海洋進出を強めれば周辺諸国との摩擦も生じます。そのジレンマは認めるが、これだけの大国を運営するには避けて通れないことで、これまで経験したことのない試練です」という。
国内事情にも触れた。「中国は多様化しました。発展の度合いや貧富の差、組織間の齟齬、ナショナリズム、これらのコントロールは難しい。国家がより高いレベルに入るときの試練です。国民に将来の展望をどう示すか。うまくいかないと排外主義になってしまいます」(王逸舟氏)
先頃、建国以来初めてという、周辺国問題での政府の指導者会議が開かれた。ここで、海洋進出で周辺諸国もともに富ませる「富隣、安隣、睦隣」が打ち出されたという。「改革・開放政策の教訓は、諸外国との協力の重要性だった」
中国はどこへ行くのか。「強くとも謙虚な国になってほしい。和して動ぜずというが、競争はしても戦争はしない。創造性を発揮して、衝突を避け、利益を生み出す。いずれ歴史が証明するだろうが、私は楽観している」(王逸舟氏)
王氏は「所得倍増」とこともなげにいったが、それにはおそらく、日本という国が2つ3つできるほどのエネルギーと資源が必要だ。全地球を敵に回すことになりはしないか。わかっているのかと心配になった。
ヤンヤン
*NHKクローズアップ現代(2013年11月21日放送「シリーズ模索する中国②大国の外交はどこへ」)