「裏事情」って言ったって、この時間帯(夜8時)だもの、昼オビみたいなドス黒いウラがあるわけないよね。とは言うものの、「家族の平和は、秘密と嘘に、守られている?」(公式ページ)というキャッチコピーに引かれて、のぞき趣味のムシがウズウズ。
で、見てみれば予想通り、下町の商店街を舞台にしたほのぼの家族の話である。あれっ、この設定って、今シーズン放送中のあのドラマにそっくりじゃない? そう、「東京バンドワゴン 下町大家族物語」(日本テレビ系土曜よる9時~)だ。
でも、東京下町ものというのは、家族愛や人情をノスタルジックに描く際の定番ジャンルだもんね。と、気を取り直していると、主役の定食屋夫婦のうち、妻を演じているのが財前直見なのである。ん? 家族を気遣い、料理バカの夫を支えるしっかり者の女将(おかみ)という役どころは、NHKの朝ドラ「ごちそうさん」と同じではないか。大正時代と現代という違いはあるけど、カブッてる感はぬぐえない。あ、でも財前のために言っておくけど、ちゃんと演じ分けている。
真野響子のお婆ちゃん、ちょっと若すぎない?
夫役の沢村一樹は暑苦しくならず、適度な演技が自然で好感が持てる。でも、妻・縁(財前直見=設定45歳)とその兄・太一(佐藤二朗=設定48歳)の母・華江(設定65歳)の役が真野響子というのにはちょっと違和感がある。ものすごく若くして子供を産んだという設定になってはいるが、若すぎるような気がするのだ。昔、二人を捨てて男と一緒にスペインだかイタリアだかに逃げたというブッ飛んだおばあちゃんだから若作りなのだとはいえ、社会人の孫を持つ齢にはとても見えない。
長男・晴彦(松下洸平)の結婚相手、累(谷村美月)のキャラが面白い。ずっと一人で本を相手に生きてきて、何でも知識と数式でしかしゃべれない。定食屋の家族と触れ合う中でしだいに人間らしくなっていくのだろうが、その変化に注目したい。
回を重ねるごとに、家族それぞれが抱える秘密が明らかになってゆく。でもハッピーエンドが分かっているから気が楽だ。それよりも気になるのは、シャッターが増え、さびれる一方の「雀町商店街」の行く末である。商店主たちは連日のように集まって対策を練ってはいるが、これといった案は浮かばない。3年近く前、取材で下町商店街のさびれぶりをこの目で見たことがあるから深刻さを実感する。(金曜よる8時~)
(カモノ・ハシ)