振り込め詐欺など特殊詐欺といわれるだましの被害が急増している。昨年(2012年)は被害額364億円で過去最高だったが、今年は9月までですでに340億円になっている。被害額は09年にいったん100億円を切るまでに減少したのだが、その後ぐんぐん増えた。ますます巧妙になってきた手口は「オレは大丈夫」という人も引きずり込まれかねない。その実例を、警察庁の原田義久・特殊詐欺対策室長が解説した。
「過去の被害を取り戻せます」公的機関名乗って電話やパンフ
特殊詐欺には振り込め詐欺と劇場型詐欺があり、劇場型はさらに代理購入型、公的機関装い型、被害回復型とある。増えているのは劇場型だという。
◆【代理購入型】60代の女性
宝石会社A社から立派なパンフが届いた。するとB社から「A社のモノはいいので、15%上乗せして買い取る。代わりに買っておいてくれ」と電話があった。放っておいたら、新聞社を名乗るC社から「限られた人へのキャンペーンで、あなたはラッキーだ。取材させてほしい」と電話があった。さらに宝石会社Dからも「高値で買い取る」という話が持ち込まれ、女性はその気になった。
B社に連絡すると、「A社に申込書を送れ。カネは要らない」というので申込書を送った。するとA社は「あなたは支払い実態がない。名義貸しで逮捕されるかもしれない。払えばOK」というので50万円を支払った。
原田は「劇場型というのはこの手口です。いろんな会社が登場して、テレビ局も登場する。カネはいらない、あなただけというのがミソです」という。
与良正男(毎日新聞論説委員)「逮捕という言葉がこわいですよね」
原田「そうです。トラブルに巻き込まれたと思わせる」
◆【公的機関を装い型】70代の男性
A社から仏像のカタログが届いた。値段は90万円。数日後、仏具店を名乗るB社から電話があり、「A社の仏像は海外で高値で取引されています。選ばれた人しか買えないので100万円で引き取ります」という。男性は詐欺ではないかと無視していたら、数日後に消費生活センターと称して電話があった。「不審な電話はないですか? 最近、仏像を売りつけるのが増えています。振り込め詐欺かもしれない。詳しく知りたい」
A社とB社を教えると、また電話があり「調べたら、両社とも優良企業です。ご安心ください」という。安心して注文し、仏像を持ってきた男に90万円を支払ってしまった。B社とは連絡がとれず、仏像も価値のないものだった。
原田「消費者センターなどからの注意喚起の電話はありうるが、いい会社ですよとか買った方がいいと薦めることはありません」
◆【被害回復型】70代の女性
国民生活センターを名乗って「大切なお知らせ」という封書がきた。詐欺の被害にあった人の調査をしているという。亡夫はかつて未公開株で1000万円の被害にあっていた。女性が電話すると、いつ頃いくらなど被害内容を聞かれた。封筒の体裁は本物と同じだが、電話番号だけがニセだった。
相手は「損害を与えた会社に隠し財産があった。いまなら十分返金できます」と金融機関のA社を紹介した。電話をすると、「ああ、8年前の件ですね」とよく知っているような口ぶりだ。これで信用した。「今なら全額返ってきます。ただ、着手金100万円が必要です。先着順なので急いでください」と急かされて払ってしまった。
まず疑え!「#9110」に相談しろ
司会の井上貴博アナ「封筒で見分けることはできますか」
原田「無理です。内容で判断するしかない。過去に被害にあった人の名簿なんてものも出回っています」
井上「どこかで立ち止まるにはどうしたらいいのでしょうか」
原田「まず怪しい電話に注意。お金を払えとなったらストップ。だれかに相談すること。警察ならもっといいですね」
警察へは「#9110」が専用番号だ。