「被害者の妻と意思を通じてやった」
今年5月(2013年)、茨城県境町の自宅寝室で妻の隣で寝ていた自動車修理工の小野里正志さん(当時38歳)が刺殺された事件で、殺人などの罪に問われた無職、野村賢志被告(25)は、きのう18日(2013年11月)に水戸地裁で開かれた裁判員裁判初公判で、起訴内容を大筋で認めたものの、単独の犯行ではなく、被害者の妻と共犯だったと主張した。妻は「私に罪をなすりつけようとしている」と全面否定し、事件は新たな展開を見せた。
多くの謎…開いていた玄関、気づかないはずない物音
事件は野村が鍵の掛かっていない玄関から侵入し、2階で寝ていた小野里さんの胸を刃物で数回刺して失血死させたもので、検察側は野村が同じ職場で働いていた小野里さんの妻に一方的に好意をよせ、小野里さんがいなくなれば交際できると思い殺害に及んだとしている。
だが、玄関が開いていたことや、隣で寝ていた妻が気付かなかった点など、いくつかの謎があった。きのうの公判で、こうした点をめぐり、被告と妻の言い分が真正面から食い違いを見せた。「これまでは単独犯行とみられていたのですが、妻とは親しい間柄で一緒にやりましたというのが被告側の新たな主張です」とレポーターの高村智庸は伝えた。
弁護側は、2012年9月に野村は妻と映画館でデートをし、手をつなぎキスもして、香水をプレゼントされたと主張している。これに対し、妻は何度も誘われたので1度行けばあきらめてくれると思って応じた。香水はいつも匂いをかがれたのであげれば収まると思った―という。
11月には手作りの弁当をもらい、被告の家でデートをして胸にも触った。これについて妻は、弁当は娘の弁当の残り物で作ったもの。家に行ったのは何度も遊ぼうといわれ、外だと人に見られる心配があったので仕方なく行ったと反論する。
さらに、犯行3日前の5月24日には「日曜日の夜中に来てほしい。玄関から来て」と妻に電話で言われた。この点に関して妻は「言った覚えはない」という。そして、5月27日の犯行当日、家に行くと玄関の鍵がかかっていなかったので、妻の気持ちは本気だと思って犯行に及んだという。鍵をかけていなかったことについて、妻は「かけ忘れたのだろう」といっている。
「裁判員」どちらの主張を真実と判断するか
司会の羽鳥慎一「被告の方に注目してみると、徐々に関係が深まっていったようにみえます。ただ、物証はなく、言い分がまったく対立していますね」
コメンテーターの宮田佳代子(城西国際大学非常勤講師)「妻に意図がなかったとしても、受け取った側がどう思ったか。そういうつもりはなくてということは、男女の関係ではよくあることですよね」
ゲスト・コメンテーターの弁護士の田中喜代重氏は「これは裁判員裁判なので、最終的に裁判員がどっちに真実性があると見るかですが、裁判員は職業裁判官よりも直感的な部分で判断するところもあるので、妻が共犯という疑いを払拭しきれないとなると、情状面で刑を1等減らすという判断に傾く可能性もあるわけです」という。
コメンテーターの堀潤(元NHKキャスター)「法廷のテクニカルな部分と裁判員の知識経験がどのように相対すればいいのか、本当に難しいですね。裁判員裁判の課題のひとつであるのかなと思いました」