愛知県稲沢市の桜木琢磨市議(70)が先月31日(2013年10月)、中国・広州の空港で覚せい剤を所持していたとして身柄を拘束されていた。市議は「他人の荷物を預かっただけだ。無実だ」と話しているというが、中国では覚せい剤所持の最高刑は死刑だ。日本人では2010年に4人が麻薬密売罪で死刑が執行されている。
成田で逮捕のドイツ女性、イギリス男性もナイジェリアがらみ
先週8日(2013年11月)、中国外務省が桜木市議の拘束を明らかにした。「広州の空港を出国の際、覚せい剤を所持していたため公安当局に刑事勾留された。いまは広東省の拘置所に拘禁されている」と発表した。持っていた覚せい剤は約3キロで、末端価格で2億1000万円相当という。
桜木市議は自動車関係の貿易会社を経営しており、中国へは先月29日に向かった。近所の人には「犬の世話をよろしく」「31日には帰宅します」と言い残していた。しかし、1日になっても帰宅せず、市の行事や委員会は無断欠席になっていた。
桜井市議を知る人たちは「中国との取り引きはこれまでなかった」「真面目な人」「覚せい剤に関わるような人ではない」と口をそろえる。市議会関係者によると、桜木市議の渡航の目的は取り引きのあったナイジェリア人男性と上海で会うことだったという。航空券はナイジェリア人が手配し、その後、広州で男性の妻から「日本で靴の販売をしたい」と靴のサンプルが入ったスーツケースを渡されたのだという。中に覚せい剤が仕込んであったらしい。
覚せい剤の密輸では今年4月、成田税関でドイツ国籍の女性が「ナイジェリア人から運んでと頼まれた」木製の置物2つから見つかり逮捕された。おととし7月にも、イギリス人男性が「ナイジェリア人が用意したバッグ」から見つかり逮捕されている。桜木市議も「ナイジェリア人」がらみだが、どんないきさつで上海から広州へ移動したのかはわかっていない。
狙われる日本人高齢者。死刑判決の可能性
税関などによると、一般市民を介した麻薬の密輸は増えており、とくに高齢者を利用する例が目立つという。薬物事件に詳しい弁護士は、利用される条件の1つが高齢者で、桜木市議の70歳もそれにあたるという。「日本の税関はお年寄りには警戒が甘いとみているんです。市議という肩書きも、もしかしたら通りやすいとみたのかも」という。
中国事情に詳しいジャーナリストの富坂聡氏は「中国も困ってると思いますよ。本来は(日本人に)厳罰を出したくないが、これまでの例との整合性がなくなる。死刑判決の可能性は高いと思います」
一般乗客の覚せい剤の摘発は年々増えており、07年の48件が11年には141件と3倍近い(財務省調べ)。専門家は(1)友人・知人からの荷物は預からない(2)預かっても申告書に「他人から預かったもの」として記入することという。桜木市議が本当にこれにあたるのかどうかはわからないが、日本人は無防備だから十分あり得る。とくに外国では気をつけよう。