「じ~ん」「つ~ん」とするのに、なんか泣けないもどかしさ
全編を通して、台詞の強さに射抜かれる。「夢を諦めるのって、こんなに辛いの」「今も未練たらたらだよ」「わたしなんかより才能あるし」「書いてから言え!」「ああああああああああああああ」「ここにいる全員が自分だけは他と違うって思ってるの」「夢が叶うのはほんの一握り、でもなぜか自分は叶う側の人間だと思ってた」「やめるタイミングがわからない」
夢を追うという行為の代償が重みをもって迫ってくる。自分を信じようとすること辛さ、みじめさ、そして尊さ。等身大の自分なんて、分かってたら苦労しないんだよ!と叫びだしたくなる。
繰り出されるキメ台詞にきちんと輪郭のあるキャラクターがあるので、ほとんど変わり映えのしない生活の場面が続いても「観られる」。一瞬入れ子的に脚本を見せたり、伏線をひとつずつ回収したりと丁寧に作り込まれている。唯一気になったのは、(天童風に言うと)「綺麗でよくまとまってて演者も巧いのに、なんか泣けない」ことかな。じ~ん、であったり、つ~ん、であったりという感覚は確かにあるのだけれど、涙はこぼれなかった。意固地で諦めが悪くて、嫉んだりひがんだりしっぱなしで、弱るとすぐ人に泣きついちゃう主人公、嫌いじゃないんだけどな。
(ばんぶぅ)
おススメ度☆☆☆