一汁三菜いまや絶滅危惧種…「一皿食事」蔓延でユネスコ登録された和食の危機的事情

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   和食の文化がユネスコの無形文化遺産に登録される見通しになった。炊きたてのご飯に魚の焼き物、季節の素材を生かした和え物、たっぷりの出汁で食材を浸すように煮て味を馴染ませる煮物、それに漬物、味噌汁は、和食の原点とされる一汁三菜だ。栄養バランスのとれた食の中に季節の移ろいを表現した料理を囲みながら、家族や知人が団欒する文化は無形文化遺産として相応しいとされたのだろう。

   ただ、残念なことにいま深刻な和食離れが進み、1皿で済ますワンディッシュ化が登録を申請した背景になっている。日本人にとって和食文化とは何か。

スパゲティーだけの夕食!広るワンディッシュ化

   食卓の変化を写真で記録してきたキューピー200×ファミリーデザイン室の岩村暢子室長によると、調査を始めた15年前はまだ多くの家庭で和食が食べられていたという。それが最近ではスパゲティーだけというような夕食が広がり、「私は、和風の煮物、和え物、煮魚、お味噌汁などすでに『絶滅危惧種』と呼ぶようになっています」と嘆く。

   和食離れを食い止めたい、少しでも和食に関心を持ってもらう手立てはないか―2年前に和食の料理人たちが中心になって、検討会を立ち上げたのが無形文化遺産登録への第一歩だった。危機感を募らせるメンバーの一人、京都の老舗料亭の主人、村田吉弘さんは「日本の子どもは、何が和食で何が洋食かも分からなくなっています。『ハンバーグは日本の食べ物?』『カレーは?』というわけです。遺産にしなければならないほど、和食は見直さなければならない段階にきています」という。

   まず和食の良さをどうアピールするか。考えたのが無形文化遺産への登録で、最初にメンバーから出た案は料亭で振舞われる会席料理だった。「繊細できれい。少量多品種で格式が高く、和食の魅力が凝縮されている」と考えたからだ。ところが、となりの韓国から思わぬニュースが入ってきた。韓国の宮廷料理の無形文化遺産登録が見送られる見通しになったのだ。食べる人が限られているというのが理由らしいとわかり、会席料理という方向の転換が迫られた。

   改めて議論したメンバーたちが注目したのは、料理そのものより和食の持つ文化的側面だった。正月から始まる節句、花見などの行事には、家族が集い団欒を楽しむ意味あいが強い。「いただきます」と自然の恵みや作り手への感謝で始まるのが和食の文化だった。

無形文化遺産登録で和食離れに歯止めかかるか

   検討会の会長を努めた静岡文化芸術大学の熊倉功夫学長はこう話す。

「文化というのは、われわれのように自然の中に生きている動物が、自然環境をどう自分たちの暮らしの中に取り込んでいくかにあります。食文化はその典型で、たとえばキノコにしてもほうれん草にしても菜園で作られ、旬の一番美味しい時期に食卓にのぼる。その新鮮な食材が次々出てくるのが自然の恵みですね。それが一汁三菜の盛り込まれています。食べ物と人間の関係、僕らは食べ物に対してもっと濃い関係を持っていたが、今はとても薄くなってしまった。作っている人とそれを食べる人との間にものすごいコミュニケーションがあり、その関係が濃いのが和食だと思います」

   和食離れが進むなかでそれが薄くなってしまった。では、和食離れを食い止める方法はあるのか。「クローズアップ現代」で具体的な対策が聞かれなかったのが残念だったが、時間に余裕のある週末に手間ひまかけて和食に挑戦してみてはどうだろう。晩秋の今からが旬のフグに勝るとも劣らないカワハギ、白身の刺身が美味しいひらめ。野菜なら山芋、とろろご飯でスタミナをつけてるのもいい。

モンブラン

NHKクローズアップ現代(2013年11月6日放送「日本の『心』を守りたい~和食 無形文化遺産へ~」)

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