北京の天安門広場で起きた車の暴走・炎上事件で、北京市公安局がきのう29日(2013年10月)に出した緊急指令から、新疆ウイグル自治区の独立派が捜査対象となっていることがわかった。突入して死亡した3人以外の5人の名前もあがっており、ウイグル族による組織的な抗議行動の可能性がいわれている。
新疆ウイグル独立派の決起?「少数民族」力まかせに抑え込む漢族政府
外務省報道官は「新疆の一部で暴力とテロリストの事案がある。断固取り締まる」と捜査対象を絞っていることを認めた。しかし、事件の詳細には触れず、国営テレビも新華社の短い報道を読むだけで映像はない。国内への波及を警戒していることをうかがわせる。
中国版ツイッター「微博」には、炎上する車やけが人の映像が出た。当局はただちにこれらを削除し、NHKの国際放送やCNNテレビのニュースも事件に触れると黒い画面に変わるいつもの状態が続いている。ツイッターには市当局が出した捜査協力の通達簿が流れ、これによると、車はウイグル・のナンバーで、死亡した3人のうち2人がウイグル人だったという。
中国は人口13億5000万人の92%が漢族で、55ある少数民族(チベット族、チワン族など)は8%にすぎない。なかで新疆ウイグル自治区は、5つある自治区の中で最大だ。人口1100万人、民族(トルコ系)も宗教(イスラム教)も言語も漢族は違う。
漢民族による政治・経済の実質支配が近年いよいよ強まっていて、所得格差、差別も大きい。これらに対する反発から各地で暴動が起きていて、2009年には200人の死者を出す大規模な暴動があった(ウルムチ暴動)。独立運動もあり、この事件で中国政府が神経を尖らせているのもそのためだ。
国内不満爆発寸前!平均収入が10倍も違う「上海と農村部」
中国語では、「群体性事件」というのだそうだ。集団で行う党や政府に対する抗議行為のことで、中国全土で06年に9万件だった(これだけでもすごい)が、 11年には18万件にもなった。少数民族だけではない。漢民族の間でも所得格差、役人の汚職という根深い問題がある。
中国問題に詳しいジャーナリストの富坂聡氏は「暴動はもっと多くて、年間30万件ともいわれる」という。30万件ということになれば、毎日800件以上の暴動やデモが中国のあちこちで起きているということだ。89年の天安門事件は学生らによる民主化要求のデモだったが、近年の暴動は様相が異なる。100人以上の僧侶が焼身自殺した08年のチベット暴動、ウルムチ暴動は信仰弾圧や民族差別への抗議だった。100以上の都市で起った12年の反日デモは日本に対する反発よりも、政府に対する不満のはけ口だった。発生件数のあまりの多さに、政府は2006年から暴動件数の発表をやめた。
貧富の格差も深刻だ。上海の労働者の平均年収が35万円なのに対して、農村では3万6000円。ほかにも、社会保障、義務教育、医療の格差も暴動の原因になる。最近では環境問題がある。広西チワン族自治区では、抗議デモが弾圧されると小学生がデモをした。江蘇省では昨年、1万人が庁舎・警察を襲撃している。
片山善博(慶応大教授)「文化の問題ですから、大きな版図で一律に統治しようとすればどこかに無理がでます。強権的にもなる」
その無理を漢民族の政府がわかってない。これが問題の根だ。