裁判員裁判の死刑判決を破棄する判決が二審の高等裁判所で言い渡され、被害者の遺族が22日夕(2013年10月)、怒りの記者会見を行なった。千葉県松戸市で2009年、千葉大4年生の荻野友花里さん(当時21)を殺害し、強盗殺人罪や他の女性への強盗強姦罪などに問われた竪山辰美被告(52)に対し、東京高裁の村瀬均裁判長は1審の死刑を破棄し無期懲役とした。
死刑を破棄した理由について、村瀬裁判長は「被害者は一人で計画性はなかった」としたが、1審ではそうした条件を踏まえたうえで堅山の犯罪歴を重視し、更生の見込みはないと判断して死刑を言い渡していた。
最高裁の懸念「裁判員裁判の厳罰化傾向」受けた判決
堅山は09年9月に強盗致傷で約7年間服役して出所し、9~11月の間に住居侵入、窃盗、強盗致傷、強盗強姦、強盗殺人、強盗強姦未遂を繰り返していた。無期懲役の判決に納得のいかない遺族はこう怒りをぶちまけた。父親は「裁判員が何日もかかって決めたことを無視するかのように覆すのはどうしても納得できない」といい、母親も「私の娘よりも犯人の方の命が重いということなんですかね」と語った。
なぜ裁判員裁判の死刑判決が破棄されたのか。最高裁の司法研修所が昨年7月(2012年)に出した報告書が大きく影響している。報告書には裁判員裁判の厳罰化傾向を懸念し、「被害者一人の強盗殺人で計画性のない場合、死刑の事例がないという先例を重視すべきだ」という「基準」を示している。
国民の意見反映という制度との矛盾
裁判員裁判が出した死刑判決を破棄することについて、安冨潔弁護士は「裁判員が熟慮した結果を尊重しないと、国民の意見を反映させるという裁判員裁判を創設した趣旨を問われる」と批判的だ。
デープ・スペクター(テレビプロデューサー)「高裁、最高裁には裁判員はいないわけですから、一審は何だったのだろう、形だけだったのか、世間の論調のためにやり始めただけなのかとなる。無期懲役という選択肢が悪い。絶対に釈放できないという条件でもあれば納得できるのでしょうがね」
司法改革自体がまだ道半ばの状態を印象付けた裁判だった。