台風26号による土砂災害で大惨事となった伊豆大島(東京都大島町)で、住民への避難勧告が出されていなかったことから、避難勧告のあり方が問題となっているが、自治体が勧告をためらう理由のひとつは住民からのクレームだという。勧告の基準も自治体によってバラつきがあり、避難勧告をいつ、どのように出すかは自治体の大きな課題となっている。
和歌山県「自動方式」基準値超えるとマニュアルで発令
リポーターの黒宮千香子がきのう21日(2013年10月)、今回の台風26号で千葉県で避難勧告を出した市と出さなかった市について報告した。まず訪れたのは約800棟が浸水被害を受けた茂原市で、ここでは台風の影響が強まってきた16日(2013年10月)午前6時15分に約5400世帯、1万2600人に避難勧告を出した。市の説明では、中小河川などを見たら氾濫が起きそうだったので、早めに局部的に広報車を出し、その後、河川の水位が市の定める判断基準を超えるのが確実となったので避難勧告を発令したという。
一方、376棟の浸水被害と9件のがけ崩れが発生した八千代市では、「時間雨量が35ミリを超えたとき」などの明確な基準を設けていたが、「総合的な判断」で避難勧告の発令を見送った。前夜遅くまで竜巻注意情報が出ていて、家の外に出ないよう呼び掛けていたという事情もあったので、勧告より強制力の弱い避難準備情報を出すにとどめた。市では「今まであまり災害が発生していなかったという甘い考えがあったのかもしれない。結果論になるが、やはり避難勧告を出すべきだった」と反省している。
こうした市町村間のバラツキを統一しようと試みたところもある。2011年9月の台風12号で大きな被害を出した和歌山県で、具体的な数値を盛り込み、基準を超えれば自動的に避難勧告を発令する方式に切り変えている。
「何もなかったじゃないか!どうしてくれるんだ」
司会の赤江珠緒「これを比較してみると、総合的判断というより、自動的発令という和歌山県のタイプの方がいいのでしょうか」
静岡大学防災総合センターの牛山素行教授は「一概には言えません。マニュアルに頼って機械的に対応してもいけないし、マニュアル的なものと現場の判断の両方が大切です」という。
赤江「自治体が避難勧告をためらう理由はなんですか」
牛山教授は次の3点をあげた。
(1)土砂災害の予測が困難
(2)住民からのクレーム
(3)避難所開設などの費用
牛山「予測が難しいことも大きいのですが、空振りを恐れるということがあります。避難勧告を出したのに何もなかったじゃないか、どうしてくれるんだ、といわれるとことを懸念するということもありますね」
司会の羽鳥慎一「判断が難しいですね」
コメンテーターの舘野晴彦(『月刊ゲーテ』編集長)「最近の風潮はみんなクレームをつけますよね。何か弱い立場のところには必ずクレームをつけるわけだから、それはたまらないですよね。また、自治体の担当者も天気の専門家ではないから、その辺も難しいでしょうね」
避難勧告の空振りは被害がなくて良かった思うべきだが、あまり続くとオオカミ少年という苦情が出る恐れもある。出す方も受け取る方も難しいところだ。