溶岩層の上にたっぷり水含んだ火山灰層―スピード早く破壊力2倍
被害を大きくしたもうひとつは火山灰だ。大島は島全体が溶岩で、その上に厚く火山灰が積もっている。現地調査した東京農工大の石川芳治教授は土石流の跡に露出した堅い溶岩を叩いてみせた。700年から800年前の噴火で、いまの元町一帯に流れた溶岩流だ。その後の噴火で二重三重に火山灰が積もり、その上に木が生えていた。普通の雨だと火山灰は水はけがよく、水は下層に落ちるが、今回の雨では下層から上層まで水がいっぱいになり、重みで一気に崩れたのだと教授はいう。
火山灰の土石流は重量がかかって流れも速くなる。森林総合研究所の実験では、火山灰を含まないものより到達距離は3割延び、破壊力は2倍になった。今回はこれに立木を巻き込んで、さらに強大な破壊力となったと見られる。
菅井記者は「川の増水と違って土石流は予測がむずかしい」という。町が避難勧告を出さなかったことについても、雨のピークが深夜になったことで必ずしも誤りとはいえないという。ただ、台風が「10年に1度」というクラスだったことは前日からわかっていた。早い時間に「警戒情報」も出ていた。町と気象庁は電話で連絡もとりあっていた。「早い時間に何らかの対応はできたのではないか」という。
町も住民も台風には慣れている。自分たちが危ない地層の上に住んでいるという意識もなかった。しかし、雨は「800年の堆積」を一気に洗い流すものだった。「まさか」という思いだろう。東日本大震災を思い出す。三陸の人たちは地震にも津波警報にも慣れていた。「1000年に1度」があるなんて思いもしなかった。「まさか」はいつか来る。が、いつなのかはわからない。
ヤンヤン
*NHKクローズアップ現代(2013年10月17日放送「『記録的豪雨』が島を襲った~緊急報告・台風26号~」)