台風26号による大雨で発生した伊豆大島の土石流は、なぜここまで被害が拡大したのか。住民避難についての判断ミスも含め3つの要因が浮き彫りになった。島上空に停滞していた前線、脆弱な火山灰地層、住民避難の遅れだ。
局地大雨はなぜ起きた?
まず16日(2013年10月)午前6時までの24時間降雨量は、75年前に観測を始めて以来最大の824ミリとなった。気象予報士の天達武史は「この大雨の原因は台風だけじゃなかった」と次のように解説している。台風が接近する前から伊豆大島には前線が停滞していて、この前線に向って冷たい空気と台風が運んでくる暖かく湿った空気が流れ込み、大島上空に積乱雲が発生させたという。これが短時間に大量の雨を降らせのだ。
脆弱な火山灰の地層も被害を広げた。大島元町神達地区と大島元町3丁目はかつての噴火で溶岩が噴出した場所だった。東京大の太田猛彦名誉教授は「溶岩の上に積もった火山灰地層は崩れやすい」という。溶岩が冷えて固まり、その上に火山灰が降り積もり、長い年月を経て樹木が根を下ろす。今回はそこへ大量の雨が降り、雨水を通しにくい溶岩層の上の火山灰層に雨水が溜まり、一気に崩れる表層崩壊が起きたとみられている。
警察の避難警告発令要請に「外に出たらかえって危ない」と町長
住民避難の判断ミスもあった。雨が降り始めたのは15日午前9時ごろで、この日の深夜までにすでに298.5ミリもの降雨があった。気象庁は大島に午後5時38分に大雨警報、午後6時5分に土砂災害警報を発令した。大島警察署も大島町に防災無線で避難警告の発令を促している。
本来なら、この時点で避難勧告や指示を出すべきだった。ところが、川島理史町長と原田浩副町長のトップ2人は出張で島にいなかった。川島町長は16日の記者会見で「夜中の1時、2時からの大雨で(沢が)氾濫しだしている状況での避難は、さらに被害者を増やしてしまうと考えた」と語っている。
天達「いろんな警報情報が出されている時点で、何らかの対策をしてたのかもしれませんけど…」
コメンテーターの木暮太一(経済ジャーナリスト)は「最近、肌感覚としておかしい状態が続いている。今までの経験を参考にしてはいけないということを認識しなければいけなかったかもしれない」と気象の変化に対する判断あり方を指摘する。