得意技のアンパンチで悪の権化・ばいきんまんをやっつけるが、ばいきんまんが倒れるまでは痛めつけない。お腹がすいた子どもがいれば自分お顔を食べさせ、ヨレヨレになるかっこ悪い正義のヒーロー・アンパンマン。その作者・やなせたかしさんが13日(2013年10月)、心不全のため亡くなった。享年95。
声担当・戸田恵子「分け合うことの大切さを教えてくれた」
神奈川県横浜市の「横浜アンパンマンこどもミュージアム」に遊びに来ていた親子連れは、「やなせさんこそ国民栄誉賞をもらえるものだと思います」「アンパンマンにどれだけお世話になったか。子供が泣き叫んでいても、アンパンマンのDVDをかけるとすぐに泣き止み、食い入るように見ていました。やなせさんの死を子供に教えたくはありません」と話す。
アンパンマンが発表されたのは1973年で、その時は絵本だった。88年にアニメ化されたが、やなせはいつもこう話していた。「本当の正義というのは、相手にミサイルを撃ち込むことや爆弾を落とすことではないでしょうね。飢えた子どもたちなどを食べさせ助けることですよ」
アンパンマンの声を担当してきた俳優の戸田恵子は「やなせ先生は私たちに分け合うことの大切さを教えてくれました。なくしてはいけない大切な道しるべを失ったような気持ちです」と語る。
「何のために生まれて何をして生きるのか」
コメンテーターの宇治原史規(タレント)いまでもアンパンマンをネタにする芸人が大阪には多いですよ。それだけ身近な存在だったんです」
司会の羽鳥慎一「アンパンマンのテーマソングである『アンパンマンのマーチ』は歌いやすいので誰でもすぐに覚えられますが、歌詞をあらためて書き起こしてみると、心にも響くようなことが書かれています。これには驚きました」
萩谷順(法政大学教授)もアンパンマン好きだった。「今でも僕はアンパンマンやドキンちゃん、カレーパンマンにばいきんまんなど主要キャラクターがすぐに出てきますよ。アンパンマンは世代を超えた存在です。死して後已むという言葉が論語にありますが、意味は死ぬまで努力をし続けるということです。やなせさんはその姿を見せたかったのではないでしょうか」と話す。
「何のために生まれて何をして生きるのか」というアンパンマンのマーチの一節をいまこそ口ずさむ中年世代も多いはず。