福島第1原発の事故で20キロ圏内は立ち入り禁止になった(旧警戒区域)。人がいなくなっても牛は残った。病気や餓死で約1700頭は死んだ。生き残った2400頭余のうち、1650頭は農家の同意で安楽死させたが、まだ約800頭が飼育されている。その牛と農家をカメラが追った。
松坂慶子も大原麗子もいる20キロ圏内800頭の飼育牛
きのう10日(2013年10月)、農水省畜産部が20キロ圏内の飼育牛の調査を行った。昨年夏から10頭ほどに白い斑点が出ている。それを調べるのが主な目的だった。何であるかはまだわからないが、長く放浪していた牛に多いという。
原発から6キロの大熊町・池田牧場の池田美喜子さん(56)は、毎日避難先から通っている。政府が出荷、移動、繁殖をしない条件で飼育を認めたのは去年4月だった。避難所は8回変わったが、ずっと許可をとって通い続け、いなくなった牛をいまも探している。牛にはみんな名前がついている。9月に生まれた子牛は「ここちゃん」。九つのここだ。「うちじゃないけど、松坂慶子も大原麗子もいたんだよ」
そこに白黒の牛模様の大型ワゴンが現れた。今後の放射能対策に生かそうと、牛の被ばく状況を調査を続けている岩手大農学部の岡田啓司准教授だ。「放射性障害がどう表れてくるか、長い目で見ていけば、人間の被ばくの話に戻せる」という。
血液を採取して遠心分離機にかけ、被ばく状態などを把握する。線量の高い地域の牛には放射線計やGPSがつけられ、放牧と土壌中の放射性物質の関係を調べる。無人管理ができれば飼い主の被ばくも防げる。飼育農家も「研究になれば牛にもいいし、われわれにもいい」という。
池田さんが牧場へ向かう途中、草原に何かを認めた。「子牛じゃないか?」。近寄ってみると、生まれて間もない死産の子牛だった。池田さんは小さな頭をかかえて「ごめんね」と涙を流した。母牛は子どもから離れようとしない。子牛はこのあと病理解剖された。放射能の影響を知る貴重な検体だ。
農水省やっと調査。これまでは見て見ぬふり
与良正男(毎日新聞論説委員)「農水省はなぜこれまで動かなかったんだろう」
TBSの桶田敦・解説委員は「殺処分ということで、警戒区域内には牛はいないという前提に立っていたんです。ために、その先に進めなかった。ところが、白班というのが出てきて、2年半経って初めて」という。なんとバカな話か。
司会の井上貴博アナ「白班はやはり放射能の影響なんでしょうか」
桶田「ストレスじゃないかといっています。劣悪な環境にいたり、狭いところに押し込められたり。白班自体は事故の前にもあったそうです」
与良「調査は必要だが、福島は危ないという風評につながることはないかな」
桶田「殺処分せずに牛を生かしていたことがよかったんですね。牛は牧草しか食べないから、内部被ばくがわかるんです。人間の被ばくを知る手がかりになります。ここで目をつぶってはいけない」
吉川美代子(TBS解説委員)「事実は事実としてしっかり把握して欲しいですよ」
与良「来週から国会が始まるけど、もう1回見つめ直さないと」
メディアも牛の話はほとんど伝えてこなかった。