三鷹市の女子高生鈴木沙彩さん(18)がストーカーに刺し殺された事件で、警察の対応の検証が始まった。犯人は家に侵入して女子高生の自室のクローゼットに隠れていた。これではまず防ぎようがない。しかし、専門家はその前段の備えだという。米田壮・警察庁長官も会見で「どうして救えなかったのか。徹底した確認作業が必要」と警視庁に注意を促した。
米国には専門の相談員とセンター
警察の手抜かりは2つあった。事件の4日前、女子高生の担任教師が杉並警察に相談したが、住所が三鷹だということで「三鷹署へ」で終わっていて、三鷹署へも連絡しなかった。次に、8日朝に両親と本人の訴えを聞いた三鷹署も、男の携帯に「三鷹署へ連絡を」と伝言しただけ。午後4時40分ころ、沙彩さんに帰宅を確認する電話をしていた。この電話をすでに部屋に潜んでいた池永チャールストーマス容疑者(21)は聞いていた。襲いかかったのはその10分後だ。
両署とも「殺す」というメールを深刻にとらえていなかったのは確かだ。元警察官の小川泰平氏は「警察官1、2名を付き添わせるなどできたはず」というのだが、2階の窓から忍び込むのは防げなかっただろう。過去のストーカー事件でカウンセリング・サポートを行ってきたNPO法人の小早川明子さんは、「何が悪かったかよりも、何が不足しているかが明確になった」という。
司会の井上貴博アナ「警察に相談する前に高校にも相談していたんですよね」
小早川「警察の他に高校しか相談先がなかったのが問題です。被害者と一緒に対処できる仕組みが日本にはない」
井上「何かをつくるということですか」
小早川「専門の相談員とセンターをつくるべきです」
新しいレギュラーになったタレントのパトリック・ハーランは「アメリカにはあります。そこへ電話1本入れると、経験のある人が答えてくれる」
与良正男(毎日新聞論説委員)「専門家なら事態の深刻さがわかるということですよね」
小早川「そうです。日本の警察はまだストーカーの危険を知らない。うろついてるだけでは危険ではないと思いがちですが、見抜ける相談員なら告訴するとか、保護するとかのアドバイスを警察に伝えられます」
メール・電話の「殺す」は本気!ただちに被害者を避難させよ
ストーカー規制法そのものは刑事手続きを定めているに過ぎない。警告や命令、告訴で被害者を守れるわけではない。小早川さんは医師と患者の例を引いて、「被害者のいうことをただ聞いているだけではプロとはいえない」という。
井上「プロ?」
小早川「電話やメールのやりとりから、段階がわかります。やり直したいという時期、次に死んじゃうという時期、そして最後は『殺す』となる。こうなったら、ただちに被害者を安全なところへ移さないといけない。今回はこれに当たります。
多くは初期のところでぐじゃぐじゃいう。その段階で早期に介入していれば、あるいは別れたくなった時に相談できるところがあれば…」
吉川美代子(TBS解説委員)「自宅の周りを警察が回っても防げないのでしょうか」
小早川「24時間365日は無理です」
与良「法律の問題か、運用なのか」
小早川「殺人罪があっても殺人はなくならないですよね。ストーカーもなくならないが減らせます。相談に来た人を死なせないという、知見をもった相談員と警察の連携です」
与良「それは公的な機関としてですか」
小早川「公安委員会が認定するような犯罪支援センターのような…」
井上「いまそれがない。どうしたらいいんでしょうね」
小早川「早期の相談です。『殺す』と来たら、殺されると思わないといけない。人はどうしても楽観したがるんです」
いや明快だ。彼女はたしか逗子のストーカー事件で被害者の相談を受けていた人だ。警察が被害者の住所と結婚後の姓を見せてしまったために殺害につながったのだった。その怒りがピリピリ伝わってきた。