名古屋の東山動物園で困ったことが起きている。ゾウのために立派なゾウ舎をつくったのに、引っ越しをしないゾウがいるのだ。あの手この手で誘導するのだが、いっこうに埒が明かない。ゾウとの綱引きがもう3か月も続く。
あの手この手の誘導作戦ことごとく失敗
先月28日(2013年9月)、東山動物園に日本最大級のゾウ舎「ゾージアム」がオープンした。これまでのゾウ舎に隣接して建てられ、広さはこれまでの4.5倍で、ゾウが悠々と遊べるプールが2つと、好きな時に浴びることができる自動シャワーや床暖房もついているという至りつくせりの豪華ゾウ舎だ。
しかし、1頭のゾウが断固して新居への引っ越しを拒んでいるのである。この動物園に来て39年になるアジアゾウのワルダー(メス)だ。「早く行こうと話しかけてはいるんですが、通じているのか、いないのか」と飼育員の湯川正幸さんも困り果てている。新ゾウ舎までのわずか22メートルの移動路をどうしても渡らないのだ。これまでもいろいろ作戦を練ってきた。
(1)母性本能作戦―子ゾウを新ゾウ舎のゲートの前に立たせ、興味を持たせようとしたが、なぜか怖がって寄りつかない。
(2)仲間で安心作戦―仲間の姿が見えれば行くのかなと、仲間を見えるようにしたが、思った以上に神経質でこれも失敗。
(3)エサで釣る作戦―なるべくお腹をすかした状態で通路にエサを置いて、それをだんだん新ゾウ舎に近づけるというおびき寄せ作戦だ。エサに向かって進むかに見えたが、鼻が届くところのエサを引き寄せるとそのまま後ずさり。
文
一ツ石| 似顔絵 池田マコト