東京・三鷹市で女子高生が殺された事件の背景がわかってきた。ストーカー行為の末に殺害した男とは以前交際していて、いわゆる別れ話のもつれだった。ストーカー事件は増えている。「一度離れた女心は2度と戻らない」という永遠の真理を学べなかった哀れな男たち。幼児化なのだろうか。
担任教師は通報!被害生徒の名前も聞かず「たらい回し」
鈴木沙彩さん(18)を殺害した池永チャールストーマス(21)は京都在住だが、フェイスブックで知り合い、東京と関西を行き来して交際していた。鈴木さんが昨年9月(2012年)に海外留学したのをきっかけに別れたいと伝えていたが、帰国した3月から池永のしつこいアプローチが始まった。
鈴木さんはいやいや何度か会った。最後は携帯電話・メールを受信拒否にしたため、池永は友人を通じたメールで脅迫、最後は「殺してやる」などと過激になった。池永は1週間ほど前から上京していて、ナイフを買うなど準備をしたうえで犯行に及んだとみられる。調べに「殺すつもりで刺した」といっているという。
鈴木さんが恐怖を感じたのは、今月1日(2013年10月)と4日に自宅周辺で池永を見かけたものの、接触も話しかけてもこなかったためだ。そこで4日に学校の担任教師に訴えた。担任は杉並署に電話したが、受けた署員は場所が三鷹と聞いて「三鷹署へいったほうがいい」といい、名前も聞かず三鷹署へも連絡しなかった。
8日に両親と三鷹署を訪れた鈴木さんの相談に、署員は池永の携帯に電話したが出なかったため、最後は「折り返し警察に連絡を」と伝言していた。 これが池永にどう受け止められたかはわからない。鈴木さんが刺されたのはその日夕刻だった。
「殺すぞ!」の脅迫男に留守電…「折り返し警察に電話を」でよかったか
実際にストーカーをどう防ぐかとなると、専門家も警察に相談するしかないという。その警察が重大事案と思ってくれないと、最後は自分で守るしかない。元神奈川県警の警察官・小川泰平氏は、今回の警察の対応を「三鷹署も杉並署もマニュアル通りとはいえなかった」という。司会の井上貴博アナが「マニュアルはあるんですか」と聞く。
小川「あります。ただ、一般事件ほど多くはないので、専門の担当者はいません」
改正ストーカー規制法では、電子メールでの脅しもやっと規制の対象になった。また、被害者の自宅だけでなく容疑者の自宅周辺での監視、ストーカー行為の現場の管轄警察でも規制できるようになった。小川氏は「学校からの相談だったのだから、三鷹署のだれそれのところへとか丁寧に扱ってもよかったのでは」という。
小松成美(ノンフィクション作家)「殺すぞというメールで脅迫罪になるのでしょうか」
小川「なります。送ったのが本人と確認できれば、立件できると思います」
井上「警察が3回電話して、留守電を残したたことは影響ありますか」
小川「警察からの電話で大半のストーカーはやめるという数字があります。が、最後は性格だから…」
小川氏は過去にストーカーに電話したとき、被害者の携帯でかけたことがある。警察からとわかると今回のように電話に出ない可能性があるからだ。三鷹署の署員にそこまでの配慮があったかどうか。小川氏も「『殺すぞ』と書く人間に、『折り返し電話を』というのは…」という。
杉並署も三鷹署もストーカー犯罪そのものをたいしたことではないという認識があるのだろう。しかし、法律まで改正するのには立派な理由があるのだ。それを一線の警察官に伝えるのは組織の責任だろう。金井辰樹(東京新聞政治部長)の意見はもっとシンプルだった。「三鷹署がパトロールを1人出していれば事件は起こらなかった」