土下座がにわかにブームになっているという。主人公がさまざまな問題を土下座で解決する漫画「謝男」(シャーマン)が読まれ、スーツ姿の男の土下座したストラップが250万個も売れて大ヒット、TBS系ドラマ「半沢直樹」で高聴取率を取ったのは土下座シーンだった。
広辞苑によると、「土下座は封建時代に高貴な人が通行する際に地面に跪いて礼をする」ことだそうだが、現代の日本人はどんな思いで土下座するのか。
「上司のミスでお客に土下座」「浮気中を見つかり土下座。矢口真理みたいに」
街で240人に「実際に土下座をした、させたことがあるか」と質問したところ、実に3割に当たる83人(ほとんど男性)が「ある」と答えた。「誰に対して土下座したか」では1位が取引先、2位が妻や彼女、3位が上司だった。では、どんな場面で土下座したのか―
「出していない料理の代金を間違ってお客から取ってしまった」(飲食店経営者)
「上司のミスでお客のところへ出向き、土下座し許してもらった。謝るのは上司だけど、上司は責任を擦り付けるのが仕事だから」(59歳の男性)
「一人になりたくて妻に離婚してくれって土下座した。パラソルが飛んできました」(中年男性)
「同棲中に浮気相手と寝ていたところを見つかって土下座した。矢口真理みたいに」(20代女性)
周囲はさせる方にもする方にも不快感
土下座する姿に周囲はどんな反応をするか。レストランで上司に土下座したとき、男性客は「情けないっていう感じ」、相方の女性も「土下座されている人も嫌だと思う」
商店街のド真ん中での土下座には、主婦が「大の大人がここでこんなことをさせるなんて、冗談抜きで上司をひっぱたいてやろうと思いましたね」と、やはり印象は最悪だ。
デープ・スペクター(テレビプロデューサー)は「ある意味では、日本人は土下座で許す、心が広いという見方もできる」と、土下座を是とした。昔なら、土下座しなかったら切捨て御免だが、今は退社やバツ1になるよりも土下座で済むならという単なる処世術。男のプライドも軽くなった。
文
モンブラン| 似顔絵 池田マコト