今度は傾斜地に立つ5つのタンクから汚染水があふれていた。東京電力・福島第一原発の汚染水漏れはもはや打つ手がないようにも見える。東電は緊急記者会見で、「2日(2013年10月)の夜に作業員がタンクの天板と側板の繋ぎ目から汚染水が漏れているのを発見しました。一部はタンクの横を走る側溝から海に流れ、その量は約430リットルと思われます」と発表した。
福島県・佐藤雄平知事は「東電の汚染水管理がずさんだから、汚染水漏れが度々起きている」とうんざりした表情で語り、浪江町・馬場有町長は「町民の多くがいまだに戻ってこないのは、東電の原発管理に不安があるからです。このままでは町が消えてしまう」と語る。
設計者は初めから漏れるのわかっていた?
それにしても、汚染水漏れが続くのはなぜなのか。日立製作所で原発の設計に携わった福島工業高等専門学校の荒木憲司教授はこう解説する。「問題となったタンクは傾斜地に設置され、水位計は一番高い山側のタンクにしかありませんでした。最も海側にあるタンクに水位計があれば、汚染水漏れはもっと早い段階でわかったはずです。傾斜地にあるタンクは5つで、パイプで繋がれていました。海側のタンクはすでに傾いていたようです」
司会の井上貴博アナ「頑丈そうに見えるタンクが傾くということがあるのですか」
荒木教授「傾斜地にタンクが並んでいてパイプで繋がっていれば、当然、山側のタンクに入れた汚染水は一番低いタンクに流れ込みます。その結果、海側のタンクは水圧により天板や側板に亀裂が入ります」
コメンテーターの与良正男(毎日新聞論説委員)「そういうことはタンクを設置する時点で東電の設計者にもわかっていたはずですよね。それでも、傾斜地に設置したのはなぜなんですか」
荒木教授「増え続ける汚染水をどう処理するかという問題や予算の問題があったのでしょう」
もはや東電の対応は限界…いずれ深刻なトラブル必至
吉越浩一郎(企業アナリスト)「では、タンクを作るときにどうすれば良かったんでしょう」
荒木教授「まず、タンクの基礎を階段状にすべきでした。そして、タンクをまっすぐに建てる。さらに、コンピューターによるモニタリングやセンサーなどを使い24時間チェックをするシステムにすべきでした。こういうシステムを作るには数百億円もの大金はかかりません。
息苦しい防護服を着た作業員を総動員して24時間3交代で汚染水処理に当たらせるというこれまでの態勢は限界に来ています。作業員の多くは疲弊していて、この態勢を続けたら、いつまた人的ミスでトラブルが起きるのかわかりません」
与良は「東電の限界をすでに超えている。政府は東電を独立行政法人にするなど新しい態勢にしないと、とてつもない事が起きる可能性が考えられますよ」と危惧した。東電を実質国有化ではなく「国営」にすべきなのかもしれない。