消費税率引き上げに伴う経済対策で、政府は設備投資減税を中心とした1兆円規模の減税を盛り込み、焦点となっていた復興特別法人税については前倒して廃止する方針だ。「法人税減税によって賃金上昇を促し、持続的な経済成長の好循環につなげていく」というのが安倍内閣の説明だが、与党内からも「被災地軽視」「賃金に回る保証はない」と批判が出ている。けさ1日(2013年10月)の読売新聞1面によると、自民党は減税が賃上げに回るよう総裁直属の対策本部を設け、賃上げ全国運動を展開する方針というが、どれほどの効果が期待できるのか。「けさの1面」コーナーで取り上げた。
安倍・自民党総裁直属で「賃上げ全国運動」
復興法人税廃止への批判は「国民には負担増を求めながら、企業の負担を軽減する。これでは国民の納得は得られない」というもので、分かりやすい議論だが、「企業の業績が上がらなくては給料は上がらない」というのも資本主義経済の原則だ。安倍首相は企業の業績が回復しなければ給料は上がらず、消費は落ち込み、デフレスパイラルを抜けだせないという理屈で、法人税減税をデフレ脱却の有力な切り札と考えているわけだ。
では、減税すれば企業は本当に給料を上げるのか。内部留保として貯め込むだけではないかという疑念が生じる。そこで、賃上げ全国運動の登場だが、「これは新しい動きですね」と司会の井上貴博アナウンサーがコメンテーターに聞く。
三屋裕子(スポーツ・プロデューサー)「企業はどうしても先のことを考えて、設備投資より内部留保という動きがあったので、なかなか最終的に給料アップまでいかなかったじゃないですか。一時金は出してもベースが上がらなかったので、これをなんとか上げないと景気全体が上がっていかないということで、党あげて頑張ろうとしているのですが、本当に反映するかなと思いますね」
ますます広がるアベノミクス恩恵派と素通り派の格差
井上「われわれのふところが潤うための前進にはなりますか」
杉尾秀哉(TBS解説・専門記者室長)「企業の活動に政府がどこまで介入できるか、社会主義国ではありませんからね。本当にわれわれのふところを増やしたいんだったら、所得税を減税することです。今回の経済対策は企業優遇なんです。景気を腰折れさせたくないという安倍首相の執念でしょうが、どこまで実効性があるのか、われわれとしてもよく監視していかねばなりません」
潟永秀一郎(『サンデー毎日』編集長)「持てる者と持たざる者の格差がもっと広がるんじゃないかと危惧します。アベノミクスの第1の矢で株価が上がり、1億円のマンションや100万円の時計が売れたというが、ごく一部の方の話でした。経済対策で景気は腰折れしないかもしれないが、数値は良くても大多数の人は実感がないということにならないか心配です」
自民党の賃上げ運動、鉢巻でも締めて、労組に負けずに頑張ってほしいものだ。