大分市の高崎山自然動物園から1匹のボスサルが姿を消した。権力闘争や恋愛事件を起こし数々の伝説の持ち主だったが、推定35歳、人間でいえば100歳超の高齢だ。死に場所を求めて群れを離れた可能性もあるが、動物園ではけさ24日9時(2013年9月)から捜索に乗り出した。
風格と実力からついた愛称「ベンツ」750匹の尊敬集め頂点
サルの名は「ベンツ」といい、750匹以上の群れを率いるボスだ。高級車のベンツのように風格があることからその名が付いた。若いころは高崎山きっての暴れん坊で、早くから頭角を現し、1987年には高崎山史上最年少の9歳でBグループのボスに就任した。
ところが、3年後に別の群れのCグループのメスのリズと恋に陥ると、リーダーとしての役目をおろそかにするようになり、群れを追いだされ、ボスの座を奪われてしまった。女性問題で失脚したわけだが、年上のリズともわずか1週間で破局、群れの端でさみしい日々を送る羽目となった。
ここからベンツの下済み生活が始まった。Bグループのボスだったとはいえ、移籍したCグループでは雑巾がけから始めなければならない。だが、もともと力量があったのか、苦節20年、仲間の信頼を獲得して2011年2月にCグループのトップに立った。1匹のサルが2つの群れのボスとなったのは高崎山初の出来事である。
先頭に立って他の群れと戦うなど力強さを見せていたが、最近は全盛期17キロあった体重が10キロに減るなど寄る年波には勝てず、高い場所に上がるのも困難になり、高齢者用の段差を作ってもらうほどだった。とはいえ、高崎山のスーパースターとしての人気は衰えを知らず、ファンから手作りのお守りが届けられるなど多く来場者や職員にも愛されていた。それが今月13日(2013年9月)を最後に姿が見えなくなったのだ。
けさ9時から捜索。そっとしておいてやるのも思いやりか…
ベンツはどこへ消えたのか。今月20日、職員らが高崎山の生息域を捜索したが見つからなかった。職員の1人は「自分の死が近づいているのが分かって、群れから離れたのではないか」という。
司会役の井上貴博アナウンサー「サル社会の構図が描かれていましたね」
コメンテーターの潟永秀一郎(『サンデー―毎日』編集長)「みんな人間社会を重ねて見ているんですよね。ベンツは、いわば自民党で総理になって。民主党でもう1回総理になったようなものでしょ。大したもんだと思います。でもねえ、死にに行っているんだと思いますね。そっとしておいてあげたい気持ちもありますね」
サルの社会では1度ナンバー1になれば終生そのままだが、このまま1か月たっても見つからない場合は、ナンバー2の「ゾロメ」がボスに就任することになるそうだ。