「ネットで変わる」はずだったもののなかで、電子書籍同様になかなか変わらないものの代表格として「オンライン教育」がある。しかし、「クローズアップ現代」によれば、少なくとも海外の高等教育はいま激変中らしい。
ハーバード大学やMITをはじめとする世界の名門大学が提供する無料のオンライン講座が続々登場していて、ジャンルも各種、豊富である。しかも、ただオンライン聴講するだけではない。ある種のプラットフォームに則っていて、毎週のようにテストやリポートが施され、全部クリアすれば修了証も(たぶん無料で)発行される。
モンゴル高校生にMITから学費免除で留学のお誘い
パキスタンの12歳の少女が数々の講座で優秀な成績を修めて世界で脚光を浴びたり、モンゴルの高校生がMITの講座を超優秀な成績で修了し、大学側から学費免除で留学のオファーをされ、MITに通うことになったりしている。
社会人にはキャリアアップのチャンスだ!成績情報を企業に提供するオプションがある講座では、修了後に企業からジョブをオファーされたケースがあるという。日本企業でもIT関係のオンライン講座修了を評価されて、新しいプロジェクトに抜擢された人がいる。
大学といえば高い入学金や学費を取って「学位」を売るところだったはずだが、いかにネット時代とはいえ、バラの「講座」を無料でバラまいてしまうと大学ビジネスの根幹が揺るぎそうな気がしないでもない。この点、オンライン高等教育に詳しい飯吉透・京都大学教授は、大学には知を通じてよりよい世界、社会の形成に貢献するという崇高なる信念、存在価値があることを指摘し、「大学の社会に対する責任の果たし方のひとつ」だとする。
ただ、もう少し卑近な狙いとしては、「一部無料公開」によって大学を世界中にアピールできるとの考えもあるようだ。オンライン講座に参加している東京大学は、「東大のすばらしい先生や世界最先端の教育内容を知ってもらい、それによって、世界各国の留学生を獲得できる」(東京大学理事)としている。
ボンド柳生
*NHKクローズアップ現代(2013年9月17日放送「あなたもハーバード大へ~広がる無料オンライン講座~」)