18号台風で京都、滋賀、福井の3府県に「大雨特別警報」は初めて発令されたが、京都市の避難勧告で避難した人は1%にも満たなかった。「伝達が行き届かない」「発表が遅い」などが原因だった。
気象庁が特別警報を出したのは16日(2013年9月)午前5時5分で、「過去に例のない、経験のない大雨になっているか、48時間の雨量から判断します。4時30分のデータを確認してこの時間に発表したもので、タイミングとしては今の技術で精一杯」という。
京都・桂川の82歳「ペースメーカー入れてるから携帯電話持ってない」
桂川の渡月橋近くで旅館を営む女将は、「午前4時半には桂川が氾濫してヒザまで浸水していました。特別警報の連絡が来たのは結構遅かったので、これからひどくなるんやろうかと心配でした」と話す。近くに住む82歳の女性は「私はペースメーカーしているから携帯電話は持っていないの。午前5時過ぎに孫から連絡があった」という。特別警報は直前の雨量を確認して発表するため遅くなるのはやむを得ないが、伝達の方法はたしかに課題が残る。
気象庁の発表を受けて、3府県が住民に伝達した方法はインターネットのホームページ、携帯電話による登録メール、防災無線の3つだった。このうち、防災無線も使って知らせたのは福井県だけ。滋賀県は庁舎のメール関係のネットワーク施設がメンテナンス中で機能したのはホームページだけだったという。高齢者の中には携帯電話を持っていない人が多い。まして、未明の5時にネットのホームページを見ている高齢者はいないだろう。
遠くの避難所より近くの2階
そのなかで、京都市は約30万人に避難指示・勧告を発令したが、実際に避難した人は2498人で全体の1%未満だった。この評価について、防災システム研究所の山村武彦所長はこう分析する。
「特別警報の一番の特徴は法律で伝達を義務付けたことです。結果的に伝達はまちまちだったようで、課題は残るが、第1回目にしては一定の評価はできると思います。
というのは、避難しなかった人の中には、避難できなかった人が圧倒的に多かったのですが、特別警報がギリギリに出されたので、かえって遠くへ避難するよりもよかったのではないでしょうか。遠くの避難所より近くの2階ということもありますから。
ただ、伝達の方法としては、命を守る行動で何をすればいいのか、状況別にしっかりとレクチャーをすることが必要でしょうね。自分の命は自分で守るという心の準備と日頃から確認作業を含め避難の訓練をしておくといいと思います」
ジャーナリストの萩谷順も「先日、名古屋市で100万人の市民に避難勧告が出されたが、皆さん戸惑った。結局、一人ひとりが避難場所について考える必要があるということですね」と指摘する。