五輪東京開催に中国の後押し!?「最大12票回してくれた」日中関係悪くてもスポーツ界交流長い

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<「60票の内訳を推測すると、ポイントとなるのは最終決戦で中国が東京を後押ししたということ。現在、日中関係は良くないですけれど、ピンポン外交などスポーツ界の交流は長いのです。となれば、中国が経済援助で影響力を持つアフリカも連動し、最大12票が獲得できた。さらにヨーロッパ44票のうち、半数以上は東京支持に回って、アラブ票を握るクウェートのアハマド王子も味方についたと見られる。この3つが勝因です」>

   9月7日(日本時間2013年9月8日)、2020年五輪開催国に東京が決まった。マドリード、イスタンブールとの争いだったが、第1回目の投票でマドリードが落ち、イスタンブールと東京の決選投票の結果、東京が60票を獲得して36票のイスタンブールに圧勝したのである。『週刊新潮』で元JOCの国際業務部参事の春日良一氏が、IOC(国際オリンピック委員会)総会での最終決戦の日本票を上のように分析している。

   今回の3都市にはそれぞれ重大なマイナス点があった。マドリードは経済問題、イスタンブールは政情不安、東京には福島第一原発事故による放射能汚染水漏れ。なかでも、IOC総会の直前に発覚した汚染水漏れは世界中のメディアが大きく報じ、最終プレゼンテーションでも委員から質問が出たほどで、直前予想ではマドリード優勢と思われていただけに、東京決定に会場内はどよめいた。

   一部に政治利用ではないかという批判もあった高円宮久子さんの「奇跡のスピーチ」(週刊文春)や、流ちょうなフランス語で聴衆を沸かせた滝川クリステル、練習の成果が出た安倍首相のパフォーマンス英語などが評価されたが、猪瀬都知事のスピーチは「絶望的英語」(週刊新潮)と酷評された。

安倍IOCプレゼン「福島原発もう大丈夫」に東電困惑「まだ野戦病院のような状態」

   他に楽しいことがないのか、テレビのワイドショーは連日祝賀ムードだが、諸手を挙げてバンザイ三唱できるのだろうか。難問の第1は、安倍首相がプレゼンテーションで「国が責任を持ってやるから大丈夫」と宣言した汚染水漏れだが、『週刊朝日』は「港湾口には放射性物質の拡散を防ぐ水中カーテン『シルトフェンス』が張られているが、専門家は水溶性の放射性物質の移動は防げないと指摘している」とし、首相の発言が招致欲しさの「ハッタリ」だったとすれば、国際社会から強い批判にさらされることになると警告している。

   『ニューズウィーク日本版』は、国がこれからつくるといっている地盤を凍らせて地下水や汚染物質の侵入または侵出を遮断する「凍土壁造成計画」に大きな難題があると報じている。凍土壁造成技術に詳しいアークティック・ファウンデーションズ社のエド・ヤーマク社長がこういっている。

<ヤーマクによると、放射性物質を封じ込めるために行われたオークリッジの工事で最も苦労したのは、作業員の安全確保と汚染拡大の防止だった。
   汚染された土壌に雨水が浸透するのを防ぐため、現場にはアスファルトが敷設されたが、作業員はそこから一歩も出てはならなかった。(中略)周辺の木々は放射能に汚染された水を吸っていたから、落ち葉も汚染されている。ヤーマクは毎朝リーフブロワー(落ち葉を吹き飛ばす機械)を持っていき、現場や機械から落ち葉を取り除かねばならなかった。
   凍結管を打ち込む穴を掘るときは、掘り出した土をそのまま密封容器に入れ、密閉された区域に運び込まなければならない。ドリルの排気もフィルターでろ過する必要があった。「技術的には福島(での凍土壁造成)はそんなに大変じゃない」とヤーマクは言う。「大変なのはそれを安全にやり遂げることだ」>

   東京電力の相沢善吾副社長が9月11日の記者会見で、「事故を起こした福島第一原発について『まだ野戦病院のような状態が続いている』と述べた」と『asahi.com』が報じている。また、安倍晋三首相が「状況はコントロールされており、東京にダメージは与えない」とIOC総会で演説したことについて、相沢副社長は<「安倍総理がどういうご趣旨で発言されたかを国に確認したところ、外洋に影響がないのでそう話したと。さらにコントロールしていきたい」と述べた。首相と現場との認識の違いがかいま見える>とも報じている。汚染水問題は一朝一夕に解決するはずはないのだ。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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