人の暮らしのなかで、思いも寄らぬ「身近な事故」が起こることがある。エスカレーター、エレベーター、湯沸かし器、シュレッダーなど。「クローズアップ現代」によると、立体駐車場では過去5年間で7人が亡くなっているという。事故の多くは、人が駐車場内に入り込んでいるのに気付かずに機械を操作したことによる圧死だという。
こうした事故では、利用者による間違った使い方や不注意が第一の原因とされることが多い。ある立体駐車場事故では、人が駐車場に入り込んでいたのに、確認しないでボタンを操作した利用者が業務上過失致死罪に問われた。
ミスを犯して人を死なせれば罪に問われる。それは正当なことかもしれないが、繰り返し起きる悲惨な事故を個人の責任、自己責任、厳罰で終わらせてしまうことは、社会的に正当とは言いがたいだろう。人というのは本質的にミスを犯す存在でもある。
「消費者安全調査委員会」間に合わない体制・人員・ノウハウ
事故調査制度の研究をしている安部誠治・関西大学教授は、人間のミスの背後にある構造的問題を追求し、「人間がミスをしても事故を防ぐ仕組みを作る」ことを目指すべきだとする。そのためには(警察捜査などとは違った)事故の再発防止のための視点からの調査が欠かせないという。
まことにもっともな話に聞こえるが、そうした調査を行うための機関、消費者安全調査委員会(消費者事故調)は、じつはすでに昨年(2012年)設立されているのである。しかし、まるで絵に描いたような「絵に描いた餅」にとどまっているのが現状だそうである。
委員会は立ち上げの試行錯誤に苦しんでおり、非常勤の専門委員に頼らざるをえない体制の弱さ、事務局員の専門知識や調査経験・ノウハウ不足、調査権限の弱さ(法律上は強い権限があるが、実際は警察捜査との兼ね合いなどから十分活用できてない)などから、いまだに最終提言を1件も出せていない体たらくだそうである。
ボンド柳生