ブエノスアイレスでの五輪招致プレゼンで、安倍首相は福島原発の汚染水漏れを懸念する声に、「状況はコントロールされています」と述べた。国内はとてもコントロールとは呼べない状態にあることを知っている。放射能の現状はどうなっているのか。阿部祐二がルポした。
未除染住宅21万戸。終わったのはたった18%
福島・大熊町は原発から20キロだが、町の9割が「帰還困難区域」だ。先月29日(2013年8月)、阿部が町のパトロールについて境界を越えたとたんに線量計の数値が上がった。毎時0.3マイクロシーベルトから1.54マイクロシーベルトに。これは自然界の平均放射線量の39倍にもなる。
福島第1原発に近づくと汚染水をためるタンクが見えてくる。駐車場からタンクまでは200メートルしかない。破損した原子炉3基を冷やすには、1日 400トンの地下水が必要だ。先頃300トンがもれたが、それが地中にしみ込んで地下水を汚染している可能性がある。
これだけでもコントロールとはいえないだろうに、さらに除染の現実が容易ならぬものだった。楢葉町を車で走っている時、道路の両側の少し離れたところに、黒い袋に詰められた除染廃棄物が延々と並んでいた。いわゆる仮置き場だ。楢葉町で10万袋はあるという。いずれ中間貯蔵施設から最終施設へと移されることになっているが、メドはたっていない。
しかし、住宅の除染は全体の17.5%(2013年7月時点)しか済んでいない。震災後の除染作業は水田、公共施設、道路などを優先してきた結果だ。未除染の家は福島県全体で約21万戸にもなる。阿部は福島市の近辺で住宅の除染作業に付き添った。庭の表土を2、3センチから5センチ削って黒い袋に入れ、代わりの土を入れる。大変な作業で、1戸に10日かかる。遅れるわけだ。
放射線量いったん下がっても、雨で流れ込んで再び上昇
川内村では新たな問題が発生していた。除染でいったんは下がった住宅の放射線量が再び上昇していて再除染の必要が出てきていた。川内村の除染は6月で1222世帯全部を終えた。村の中心は毎時0.079マイクロシーベルトと国の基準0.23を下回っていた。それがまた上がるとはどういうことか。ある家では、1年半前の除染で数値は0.7マイクロシーベルトから0.3へと減っていたのだが、いま計ってみると0.5だった。
裏が山なので、雨などで放射性物質が流れ込んでくるらしい。除染は建物から20メートルまでしかやらないから十分に考えられる。村はいま国に再除染を求めている。
司会の加藤浩次「こういうケースはもっとありそうですね」
宮崎哲哉(評論家)「実際は庭先に埋めるとかしている。とてもコントロールされてるとはいえない」
キャスターのテリー伊藤「東京ドーム23戸分の場所が必要ですが、そんな場所ありませんよ。無理です。下手をすると、仮置き場が最終処分場になりかねない」
そんな状況でオリンピックが割り込んできて、省庁のシロアリもなくならず、さらに復興が遅れやしないかと心配になる。