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『世界の知性』が語る「高齢セックス」―受精という呪縛を超えた楽しみ

   『週刊現代』は「『昭和のSEX』全公開」、『週刊ポスト』は「60歳からの『アダルトビデオ』」をやっている。私は実用という点では週刊ポストに軍配をあげるが、強く勧める気にはならない。

   週刊ポストはポスト「YURI」にしようというのだろうか、「台湾からやってきた謎の美女『U』」というカラーグラビアをやっている。たしかに可愛いが、ただそれだけ。YURIを超える娘(コ)ではない。

   読める軟派記事といっては失礼だろうか。週刊現代で始まった「『世界の知性』に聞く」で、『銃・病原菌・鉄』の著者・ジャレド・ダイアモンドUCLA教授にセックスについて聞いているが、面白いので紹介しよう。日本で高齢者がセックスに積極的になっている(実態は週刊現代と週刊ポストが煽っているだけではないか?)ことについて聞かれ、こう答えている。

   <「(中略)多くのアメリカ人高齢者はセックスに興味持っています。面白いのは、高齢者が伴侶を亡くした際、よく聞く再婚の理由が『セックスのため』というものです。 50年前には、こんなことは恥ずかしくて口に出せなかった。『高齢者はセックスをしないものだ』『80歳でセックスなんて気持ち悪い』と考えていたんです。でも今はそうではありません」

   興味深いのは、大昔、女性が排卵日を隠すというのは生物学的に意味があったというのである。<「われわれの祖先の猿人の女性たちは、排卵日を隠すことによって、多くの男性たちが持つ敵意を抑えることができるようになったのです。どういうことかと言うと、それまで男性は、周囲にいる自分の遺伝子を持っていない子供、つまりライバルの子を平気で殺していました。しかし女性が排卵日を隠せば、目の前の子は自分とセックスして生まれた子かもしれないので、男性側はその子供に危害を加えることができないのです。

   そしてまた、人間の女性は、排卵日以外にも男性にセックスさせることによって、男性を自分のもとにとどめておくことができるようになったのです。人間の女性は、妊娠期や出産期、子育て期に男性に庇護してもらう必要があるからです」>

   父母がセックスして自分がこの世に生を受けた意味については、こう考えているという。<「人間の存在というのは、自然淘汰の法則の結果、あなたの父母が性欲を得てあなたに遺伝子を残した。生物学的進化論の結果として、あなたが存在しているということです。それは犬や猫がこの世に存在していることと同じです」>

   したがって人生の意味については、こう考えたらいいという。<「自分の有限の人生を、存分に楽しめばよいのです。伴侶や子供、友人など愛する周囲の人々に満足感を与え、未来の世界の人々の満足度を増やすように生きていけばいい。自分の生が遺伝子の引き継ぎでしかないと知ってこそ、人生の楽しみ愛する人の大切さが分かってきます。

   生物学的進化の結果ということで言えばセックスも同じで、先ほど排卵日の隠蔽の話をしましたが、これによってヒトは一夫一妻制というスタイルに変わり、『受精』という呪縛を超えた、『楽しみのためのセックス』を手に入れました。(中略)

   私たちは一夫一妻制という夫婦関係がどれほど安寧をもたらしてくれるのか、また、セックスがどんなに楽しいものかを知っているのです。そして私は、それはとても素晴らしいことだと思うのです」>

   世界の知性がセックスについて語ると、何やらありがたくなるから不思議である。このダイアモンド氏、1937年生まれだから75歳ぐらい。まだセックスのほうも現役なのだろうか。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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