シリアの化学兵器使用に対する米国による軍事介入が延期されることになった。オバマ米大統領は8月31日(2013年)、限定的な武力介入に踏み切る決断を表明したが、同時に「この政府は人民の人民による人民のための政府なので、国民の代表である議会に承認を求める」方針も明らかにした。
大統領の権限で武力介入は可能だが、国内世論に反対が強いことから議会のお墨付きが必要と判断したのだろう。では議会の承認を得られる見通しはあるのか。ワシントン支局の吉川純一記者に見通しを伝えた。
大統領権限で強行すれば政権ピンチ
吉川記者はこう解説する。「上院の過半数は民主党、下院の過半数は共和党という、いわゆるねじれ状態ですが、アメリカの国益に関わる問題ということで、民主党対共和党とひとくくりでは言えない状況です。与党民主党の中にも反体制派に効果的な武器を供与すべきで武力介入には反対という議員もいれば、共和党の中に限定的な武力介入では不十分と訴える議員もいる。どう結論が出るかは先行き不透明です」
小松靖アナ「議会がノーと結論を出した場合、オバマ大統領はどういう決断をすると見られているのでしょうか」
吉川「議会の決定に反して強行すれば、議会や国民の反発は必至です。ノーという議決が出た時は、厳しい選択がオバマ大統領に課せられることになります」
サリンで1429人死亡―米政府報告書
青木理(元共同通信記者)はこう語る。「オバマさんは、ブッシュ前大統領のイラク攻撃を単独行動主義だと訴え当選したわけで、そのときと今回は状況が違うというのはあるのでしょうが、議会が否決すれば政権自体がダメージを受ける可能性があります。
しかし、武力介入すればシリア政権が隣国を攻撃する可能性もあり、中東全体が液状化する危険性もある。この軍事介入は極めて疑問ですね」
8月21日に使われた化学兵器で1429人が殺害されたと米政府の報告書は述べているが、このとき使われた化学兵器はサリンの可能性が高いという。アサド政権はかなりの量の化学兵器を備蓄していると見られており、米政府が懸念するように、これがテロ組織の手に渡り使われるのも怖い。
議会がどんな結論を出すか。現在、議会は休会中で再会されるのは9日以降になる。