きょう27日(2013年8月)、午後1時45分にJAXA(宇宙航空研究開発機構)が12年ぶりに開発した国産新型ロケット「イプシロン」1号機が打ち上げられる予定だったが、不具合が生じて直前に中止となった。発射場はこれまで日本を代表するといわれた「おおすみ」、大きな話題となった「はやぶさ」が打ち上げられた九州・鹿児島県の内之浦宇宙空間観測所だ。キャスターの国谷裕子は「災害監視などを行う小型の地球観測衛星が続々登場し、東南アジアなど新興国で需要が高まっています」と伝える。
心電図ヒントに点検作業もコンピューター化…作業スタッフ数人
小型衛星の観測技術の例として、アメリカ本土を襲ったハリケーン「カトリーナ」による被害状況やドイツでの農作物のできを撮影した写真が紹介された。「こうした小型衛星の需要が高まっている中、イプシロンは世界で初めて点検作業の一部をコンピューターで自動化して、低コストで打ち上げを可能にしました。これまでH2Aロケットは100人近いスタッフが点検作業に従事していましたが、イプシロンでは数人のスタッフでできるようになっています」(国谷)
点検作業の省力化を推し進めてきた森田泰弘プロジェクトマネージャーは、「コンピューターによる点検作業のヒントとなったのは、医療現場で使われる心電図です。複雑な点検作業に必要な熟練の技術者の技術と判断をプログラム化しました」と語る。
国谷「こうしたコストダウンの結果、イプシロンの打ち上げ費用はそれまでのH2Aロケットの半分、38億円ですむようになりました」
中須賀真一(東京大学教授・宇宙政策委員会委員)は「これまでの日本のロケット産業は発注元が国で、大型ロケット打ち上げに成功すればよしとしていました。でも、これでは海外の市場に売り込こむとはできない。日本のロケット産業はダメになるという閉塞感がありました。イプシロンは開発者の視点から需要者の視点に変えようとしています」と説明した。