原爆や戦争の悲惨さを体験の基づいて描いた漫画「はだしのゲン」を、島根県松江市の小中学校の図書室で子どもたちが自由に閲覧できなかった問題に決着がついた。26日(2013年8月)、市教育委員会が事務局の手続きに不備があったとして閲覧制限を撤回し、学校の自主性に任せることにした。
「手続きの不備」とは、教育委員会に諮ることなく教育長ら事務局が独断で閲覧制限を決めたことだが、肝心の「過激な描写」の是非については触れずじまい。しかも、「学校の自主性に任せる」という責任転嫁の措置に新たな疑問が浮上した。
「強制と受け取られかねないことに配慮が足りませんでした」
「モーニングバード!」は閲覧制限を決めた事務方の責任者だった当時の福島律子教育長にインタビューした。5月に教育長を退任し、市総合文化センター館長に就いている初老の婦人は、ごく一部の戦争の描写を理由に、独断で制限に踏み切ったことを認めた。
―なぜ閲覧制限の要請をしたのか。
「あのときは本当に…、やっぱり私は…、あれは強烈でした。とくに女性が乱暴を受ける場面がそのままですから。たしかにそれだけのことを戦争はもたらすんだということなんですけれど、そういうことが分かるような環境において見せてやりたいという気持が非常に先行しました。はだしのゲンを全く否定する気はありません」
―では、なぜ教育委員会の場で審議しなかったのか。
「私どもはゼロにする意図は毛頭なかったが、学校の受け取り方としては市教委への『お願い』という形であったとしても、そう(強制)と受け取られかねないことに対する配慮が不足していたと思う」
市教育委の審議に諮らなかったことは「権限の範囲内と考えていた」といい、「強制の意図はなかった」というが、市立小中学校の校長会で2度にわたり徹底するよう要請しており、強制と受け取るのが普通だろう。
―本当はどういうことをしたかったのか。
「発達段階に応じて提供し、工夫してやって頂きたいというのが本心だったのですけれども」
文
モンブラン