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藤圭子自殺!五木寛之が評した「演歌ではなく恨みの歌『怨歌』」

   これを書いているところに、宇多田ヒカルの母親というより、われわれ世代の「恨歌」の星だった藤圭子が亡くなったというニュースが流れた。asahi.comによれば、<歌手の藤圭子さん(62)が22日午前7時ごろ、東京都新宿区西新宿6丁目の路上で倒れているのが見つかった。病院に運ばれたが、まもなく死亡が確認された。警視庁は、現場の状況から、現場前のマンションから飛び降り自殺したとみている>そうである。

   自殺の原因はわからないが、私にはそんなことはどうでもいい。69年に「新宿の女」でデビューし、70年には「女のブルース」「圭子の夢は夜ひらく」が大ヒットした。作家の五木寛之氏が彼女の歌を評して、彼女の歌は「演歌」ではなく恨みの歌「怨歌」であるといったことで、70年安保で挫折し、生きていく先に希望の見えなかった私のような若者たちに熱狂的に迎えられた。十五、十六、十七と、私の人生暗かった~と歌う彼女の「夢は夜ひらく」は、まだ青線の名残の残っている新宿ゴールデン街によく似合った。

   結婚してからだろう、アメリカに住み、彼女の子供が宇多田ヒカルだというのはずいぶん後になって知った。何か彼女に似合わない気がしていた。彼女の人生が、彼女の歌っていた歌の歌詞通りでいいはずはない。だが、彼女の訃報を聞いて、彼女らしい人生の閉じ方をしたのかもしれないと思ったのも事実である。

   今夜は藤圭子の歌を口ずさみながら酒を飲む中高年が多いことだろう。結局、オレの夢は夜も昼も開かなかったなと、独りごちながら。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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