昭和天皇の苦難を描いたアレクサンドル・ソクーロフ監督『太陽(2005年)』が傑作であるのは、一貫して天皇を「一人の人間」として描いていたからだろう。だから、天皇が夢を見るシーン(魚の戦闘機が東京を空爆する)に観客はカタルシスを感じるのだ。監督の伝えたいことが見えなければ、観客は何も感じない。この映画が伝えたかったのは「アメリカ側が終戦後の日本を描く」という形式的な安いヒロイズムだけで、中身などない。初歩的な教材としては、ある程度機能するだろうが。
川端龍介
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